野生のハムスターに関する先行文献 2

野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
前トピックが長くなったため、一旦区切りを付け、新たにトピックを立てさせて頂きました。
さて、早速ですが『ハムスター 飼育・繁殖・ショーのための完全マニュアル』を一読しましたので、内容を共有させて頂きます。
この本は、イギリスのハムスター愛好家協会(National Hamster Council、略称NHC)の会員であり、ショーの審査員でもあるジミー・マッケイ氏が、1991年に出版した飼育書です(翻訳版は2001年)。
ショーというのは、主催団体が理想とする美しいハムスターを審査、表彰する品評会のことです。
この飼育書は、ショーに出展するための、血統がよく優秀なハムスターの作出を目指す愛好家を主たる読者として想定しています。
冒頭のハムスターの歴史に関しては、原典を調査し、集めた情報の詳細が事実であることを確かめるため、歴史に関わってきた人々に直接尋ね、それが不可能な場合には近い親戚や同僚の人々から話を聞くよう努力を重ねた、との記載があり、かなり時間を掛けて正攻法で調べた力作であるといえます。
実際、ゴールデンハムスターの歴史について、マッケイ氏が30年前に集めた資料と同等かそれ以上のものを自分に集められるかと問われると、そんな自信は全く無いです。
当時証言できた方は既に亡くなっているでしょうし、自費出版の本は当時から入手困難で、その他の書籍や論文についても現在は散逸している可能性もあります。
まずは、アハロニ氏以前の発見についての話です。
1797年、医師アレキサンダー・ラッセル氏がその著書"The Natural History of Aleppo"第2版の中で、彼(または彼の死後第2版を発行した弟パトリック)が解剖中のゴールデンハムスターを目にし、観察した内容が書かれていました。
この時はまだクロハラハムスターの一種であると思われていました(巻末の関連書籍一覧には1794年と記載されています)。
1839年、ロンドン動物学協会のジョージ・ロバート・ウォーターハウス氏が、シリアのアレッポから入手したゴールデンハムスターの標本を同会に提出し、"新種"のハムスターであるとして、学名が付けられました。
その標本は、本書が発行された1991年現在もロンドン自然史博物館に展示されているとして、写真も掲載されていました。
巻末には、該当のものかどうかは分かりませんが、動物学協会の論文(1934,1947)と、自然史博物館の書籍(1980)が載っていました。
1880年、アレッポの総領事ジェームス・ヘンリー・スキーニ氏が、アレッポ勤務時代に捕獲・繁殖させていたゴールデンハムスターのコロニーをスコットランド(エジンバラ)の自宅に持ち帰り、このコロニーは30年以上存続しました(巻末にスキーニ氏の著書は見つかりませんでしたが、イギリスの研究機関の書籍はいくつかあったので、その中に書かれているのかも知れません)。
続いて、アハロニ氏に関する話です。
1920年代の後半、エルサレムのヘブライ大学寄生虫学準教授(後に教授)であったソウル・アドラー氏は、研究用の動物としてチャイニーズハムスターを使っていましたが、この種は繁殖が難しく、原産地からの輸入に頼らざるを得ませんでした。
アドラー氏はウォーターハウス氏の論文を読んでおり、新しい研究用の動物としてゴールデンハムスターを入手したいと考え、同大学動物学教授で動物博物館の責任者であったイスラエル・アハロニ氏に依頼しました。
アハロニ氏はこれを引き受け、1930年に、現地人ガイド(ジョルジウス)とともに、シリアでハムスターの調査を行いました。
この詳細については、1942年に出版された彼の著書“Memoirs of a Hebrew Zoologist“に記されているとあり、以下の内容がそれをまとめたものと思われますので、そのまま引用します(引用が多く問題がある場合は、管理者様にはお手数をお掛けしますが、削除をお願いします)。
引用:
1930年4月12日、村長の指示で小麦畑の周囲にハムスターを探す穴を掘る作業が始められ、現地の村民が2.5mの深さまで掘ったところで、 雌1頭とまだ目も開いていない子11頭がいる巣が発見された。巣を丸ごと(子や母親もいっしょに) 木箱に移したとき、恐ろしいことが起こった。 母親が子の頭を咬み切り、殺してしまったのである。
これを目撃したジョルジウスは、残りの子を助けるため素早く母親を引き離し、母親をシアン化物入りのビンに入れて処分した (アハロニは1930年4月27日と29日にも別のゴールデンハムスターを捕獲しており、その雌標本3体はベルリン動物博物館に展示されている)。
1頭の子は逃げてしまったが、残りの9頭はアハロニと妻の手でうまく育てられた。
この9頭はヘブライ大学のハイン・ベン・メナシェン博士の手に委ねられ、スコパス山にある大学の動物繁殖センターに移されたが、 ケージの床が木製であったためにハムスターがケージをかじり、翌日にはすでに5頭が逃げてしまっていた。
逃げたハムスターは、1頭も生きたまま回収できなかった(アハロニ教授によると、雄3頭と雌1頭が残ったことになっているが、これとは矛盾する報告も存在する)。
しかし、残されたハムスターたち(以後は乾草を詰め込んだ、大きなワイヤーメッシュケージで飼育された)は1年もたたないうちに150頭にも増えた(p.18)。
諸説あり、という但し書きはありますが、この内容を正しいとするならば、アハロニ氏が巣から取り出したのは、メスと12匹の仔ハムでも、妊娠した雌のハムスターでもなかったということになります。
動物学の研究をされている方々も、現在飼育下にあるハムスターの祖先が何匹であったとしても自身の研究テーマに影響はないため、直接原典は確認していなかったということでしょうか。

野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
さらに、アハロニ氏以降、野生のハムスターを捕獲した情報についての部分も、以下に引用します。
引用:
他にも、アメリカにはマイケル・マーフィー (アメリカ人)がアレッポ地域で捕獲した13頭のゴールデンハムスターのうち12頭 (雄4頭と雌8頭)が、1971年5〜6月に持ち込まれている。(中略)その子孫たちは今も、メリーランド州ベセズダにある国立衛生研究所で繁殖に供されている。
また、1978年には別のアメリカ人 (ビル・ダンカン)がアレッポ地域で5頭のゴールデンハムスターを捕獲し、2頭の雌をテキサス州ダラスの南西部医学校に連れ帰っている。
さらに、1980年にも、国立乾燥地農業研究センター (シリア)でげっ歯類対策に取り組んでいた研究員によって、野生のゴールデンハムスター2頭が発見されている。残念ながらこの2頭は、捕獲前にネズミ用の毒餌を食べていたため、捕獲後間もなく死亡した。
この研究員は1982年にも同じ場所で別のペアを捕獲したが、雄はすぐに死んでしまった。雌はイギリスに持ち込まれたが、子は生んでいない(おそらく高齢であったため)。ハムスターに関する書籍の大部分には、現在飼育されているハムスターはすべて1930年に発見されたハムスターの直系子孫であると書かれているが、上記の資料より、1970年代やそれ以後に捕獲されたハムスターも祖先として貢献していることが明らかとなった(p.21)。
この「上記の資料」について、巻末にはマーフィー氏やダンカン氏による著書は見つからなかったのですが、彼らが寄贈したとされる研究施設や医学校に記録が残っている可能性があり、アメリカの研究機関の書籍もいくつか掲載されていました。
事の真偽もさることながら、原典には孫引きでは得られない情報が書かれていることもあり、できればこれらの書籍も図書館で探してみたいと思います。
なお、1997年〜1999年に19匹が捕獲されたという情報については、この本の発行後の話ですので、ここでは確認することができませんでした。
以上の内容が全て正しいものとする前提で、ここまでに分かったことをまとめると、少なくとも約100年前には、ゴールデンハムスターの生息域は農業地帯になっており、草原で得られる野草や種実類、昆虫類だけでなく、畑で採れる小麦類も食料とし、それ故に害獣として駆除の対象となっていました。
さらに、ハムスターの生態として、以下の記述もありました。
引用:
ハムスターは夜行性で夜間に活動すると思われているが、実際には薄明薄暮性で、夜明けや夕暮れに活動する(p.31)。
ガッターマン氏の論文が発表されたのは2001年で、その10年前に、既にゴールデンハムスターが夜行性であることを否定していたことには驚きました。
引用:
ハムスターは低温には比較的強いが、温度の急激な変化にはきわめて弱い。逆に、冬の気温が0℃前後で飲料ボトルが凍るほど寒いハムステリー(飼育小屋または飼育部屋)でも、温度変化がなく良質の敷料(床材)が十分に与えられていれば、1頭も冬眠せずに子も生まれ育つ(p.166)。
もっとも、この本では(繁殖を目的として)推奨される室温は年間通じて18〜20℃、療養中は23〜25℃に設定することとされています。
飼育方法については、本トピックの主旨からはやや外れますが、マッケイ氏やその先輩会員方の長年にわたる経験に基づく内容になっていて、大変興味深いものがありました。
具体的には、30×30cm(繁殖用は30×40cm)以上の小さなケージを多数収めた、スライド式またはキャスター付きの棚をハムステリーに設置し、照明やヒーターはタイマーやサーモスタットで設定するなど、厳密に管理した飼育環境を基本としていて、巣箱は必須ではなく(この辺りはブリーダーらしい飼い方かと)、床材はカンナクズを2cm敷くとしていました。
エサに関する情報も多く、小鳥用のミックスシードを独自に配合したものやミルワーム(8℃で管理とのこと)、安全に食べられる野草や種実類が紹介されていました。
さらに、安楽死に関する記述があったのは、ヨーロッパならではだと思いました。
30年前のイギリスの愛好家の飼い方が、現在の欧米で一般的なものなのかどうかは分かりませんが、少なくとも海外の方のいくつかのYouTubeに見られるような、大きなケージに床材を厚く敷いた飼育方法とは全く違っていました。
それから、飼育方法以外で目を引いたのは、野生化の報告です。
世界の様々な地域で野生化したコロニーの存在が報告されていて、それらの詳しい記録が残されているものは非常に少ないとのことですが、イギリスでは1958〜1981年にかけて、ペットショップから脱走したハムスターが野外で繁殖し、八百屋や家庭菜園、花屋などを荒らしているとして苦情が寄せられ、トラップと毒餌で捕獲された事例が7件記載されていました。
日本はイギリスより暖かいのにも関わらず、脱走したハムスターが繁殖した事例を、私は聞いたことがありません。
日本より厳しく思える環境で野生化していて、日本では生き延びることができていないのだとしたら、その理由が若干気になります。
最後に、なぜこの本の情報が日本で広まっていないのかといえば、端的に言って、本の価格が専門書並であるからではないかと思います。
実際、専門書と呼べる情報量ではあるのですが、遺伝を学び、繁殖を行い、ショーに出展するといった予定のない飼育者にとって、本書のうちの3分の2は全く生かす機会のない内容になると思います。
また、繁殖についての情報が具体的過ぎるため、図書館に置いて、普及させてほしいとも思えないです。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
ふと思ったのですが、ここまで根気よく長文を読み進めてくださった方は、動物学に関心があると思いますので、もしよろしければ学会に顔を出してみたらいかがでしょうか。
年会費は多少掛かると思いますけど、発表せずに、ただ人の発表を聞いて質疑応答に加わるいるだけでもいいですし、何なら聞いているだけで、資料を持ち帰って家でゆっくり読んでみるのもいいかも知れません。
私は学会(動物学ではありません)に出席すると、日本語以外は理解が怪しく、ひたすらメモを取って、後で読み返したり(しなかったり)しています。
会場で研究者の方々と、直にお話できる機会もあるかと思います。
日本動物学会

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
補足です。
上記の学会への入会資格は特にないようです。
一般会員より教員・学生の資格がある方が会費は安くなっています。
学生というのは大学生を想定しているとは思いますが、高校生が発表する機会もあるので、年齢制限もないかも知れません。
引用:
入会について
動物学会は研究者や学生のみではなく、広く一般の方に会員になっていただくことができます。中学・高校の教員の方には、特別会費の設定があります。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 管理者
いつもありがとうございます。
「山登魚」さんの引用:
ショーというのは、主催団体が理想とする美しいハムスターを審査、表彰する品評会のことです。
昔見た映画で、「お前の人種は何でも競いたがるよな」みたいなセリフを思い出しました。これも国民性の違いですかね。
私からすると、どんな長所や短所があっても、うちの子が一番でいいんじゃないの?と思いますが。
「山登魚」さんの引用:
具体的には、30×30cm(繁殖用は30×40cm)以上の小さなケージを多数収めた、スライド式またはキャスター付きの棚をハムステリーに設置し、照明やヒーターはタイマーやサーモスタットで設定するなど、厳密に管理した飼育環境を基本としていて、巣箱は必須ではなく(この辺りはブリーダーらしい飼い方かと)、床材はカンナクズを2cm敷くとしていました。
文献より100年近く経ってるので、ハムスターもペットとして進化し、地域によってエサの原料も違うのだと思いますが、この手の論文を読むと、繁殖ってそんなに難しいことだったの?とか思いますね。
我が家では平均産仔数以上の子供が生まれましたし、里子に迎えるためお伺いしたお宅でも、生まれ過ぎて困ると嘆いていました。
「山登魚」さんの引用:
日本より厳しく思える環境で野生化していて、日本では生き延びることができていないのだとしたら、その理由が若干気になります。
当時だと野性味が強かったことと、湿度と天敵の存在もありますね。
飼い方がうまいと、呑気なハムスターの性格が強く出てしまって、天敵に瞬殺されてしまうことも関係ありそうですし、野外でハムスター見つけると、連れて帰ってしまう人も多そうですし。
「山登魚」さんの引用:
ふと思ったのですが、ここまで根気よく長文を読み進めてくださった方は、動物学に関心があると思いますので、もしよろしければ学会に顔を出してみたらいかがでしょうか。
行きたいです!が、私はサイトの更新すら滞ってます。
「お金がある人はお金を、時間のある人は時間を、両方がない人は理解を」がボランティアの基本ですが、理解のある人は精一杯な人が多いですね。
私は知識と技術でサポートかな?
「山登魚」さんの引用:
年会費は多少掛かると思いますけど、発表せずに、ただ人の発表を聞いて質疑応答に加わるいるだけでもいいですし、何なら聞いているだけで、資料を持ち帰って家でゆっくり読んでみるのもいいかも知れません。
資料として読む分はいいですけど、飼い主とは生き物としての関わり方や考え方が違うので、私が専門家のグループに混じってしまうとトラブルを起こしそうです。
私の先輩もトラブルを起こしていますし、私が獣医師や業者に関わろうとしたときも良い反応ではなかったですね。
とはいえ、先輩も私も普通の素人ではないですからね。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
こちらこそ、いつもコメントありがとうございます。
「管理者」さんの引用:
繁殖ってそんなに難しいことだったの?とか思いますね。
発見当初はハムスターの能力や飼い方がよく分かっていなかったから、逃げられたりコロニーが途絶えたりしていたように思います。
飼育環境が軌道に乗って安定すると、今度は繁殖の可否というより、コントロールの問題になってくるようです。
アクアリウムについては、全く同じことがいえます。
「管理者」さんの引用:
私からすると、どんな長所や短所があっても、うちの子が一番でいいんじゃないの?と思いますが。
同感です。
体が大きく、毛色の美しい個体同士を選んで交配し、優秀な血統の固定化を狙っていくよりも、ハムスターの心身の健康を第一に育てた結果、体が大きくて目が綺麗で毛並の美しいハムスターになった、という形が、私は自然で好きです。毛色とか模様とかは、その子が生まれ持った個性として愛でればいいのではないかと感じます。
「管理者」さんの引用:
文献より100年近く経ってるので、ハムスターもペットとして進化し、地域によってエサの原料も違うのだと思いますが
18世紀末にラッセル氏が見つけたゴールデンハムスターは、頬袋に若いインゲン豆を縦並びにぎっしりと詰め込んでいて、テーブルの上に広げたところ、ハムスターの面積の3倍もあったとの記述がありました。
インゲン豆は中南米原産で、地域に自生する植物ではなく、農作物です。少なくとも食性については発見者の記述でも参考にならないかも知れないと思い始めました。
生物の進化を考えると、ハムスターの胃腸や頬袋は、地域の農業化が進む前の、食料が乏しかった時代に合わせて発達したものでしょうから。
因みに、本の中で公開されていたバランスのよいフードのレシピは以下の通りです。
<バランスのよいフードのレシピ>
- パピーフード (タラの肝油を含む) (24%)
- ヒマワリの種 (12%)
- ピーナッツ (8%)
- 穀類のミックス(小麦、大麦等) (28%)
- エンドウ豆のフレーク (4%)
- オート麦(挽いたもの) (12%)※
- トウモロコシのフレーク (12%)※
※これらは"エネルギー源"となるため、冬以外は量を半分に減らす。
この時代はまだペレットではなく、愛好家は独自のレシピを、一般の飼育者は市販のミックスフードを使用しているとのことでした。
現地に自生する植物は何一つ含まれていないのですが、加工され、保存料等の添加物が含まれたものでない分、発癌性は低いのではないかと期待したくなります。
「管理者」さんの引用:
当時だと野性味が強かったことと、湿度と天敵の存在もありますね。
飼い方がうまいと、呑気なハムスターの性格が強く出てしまって、天敵に瞬殺されてしまうことも関係ありそうですし、野外でハムスター見つけると、連れて帰ってしまう人も多そうですし。
なるほど。イギリスは雨や霧の多い印象でしたが、調べてみると、日本より相対湿度が低かったです(アメリカは言うに及ばず)。
呑気なハムスターを野外で見つけたら、私もきっと連れて帰ります。
「管理者」さんの引用:
行きたいです!が、私はサイトの更新すら滞ってます。
今年の大会は9月4日(木)〜6日(土)、名古屋で開催されることが決まっていて、非会員でも参加できるようなので、興味深い論題があれば、聞きに行ってみたいと思っています(まだ発表者も募集中の段階です)。大阪万博と合わせて予定を組めたら楽しそうです。
「管理者」さんの引用:
飼い主とは生き物としての関わり方や考え方が違うので、私が専門家のグループに混じってしまうとトラブルを起こしそうです。
動物学における研究対象の動物は、経理の方がお金を見るような、割り切った感覚なのでしょうか。
「管理者」さんの引用:
とはいえ、先輩も私も普通の素人ではないですからね。
本当にそう思います。飼育書でも専門書でも、何を読んでも、既にハムエッグに書かれている内容に及ばないものがほとんどでした。
管理者様や先輩ユーザー様方が見聞きし、調べてきた情報の質や量の多さに加え、これまで看取られてきた数多くのハムスターたちが教えてくれたことを無駄なく蓄積してきた証が、このサイトに書かれている内容なのだと思います。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 管理者
「山登魚」さんの引用:
逃げられたりコロニーが途絶えたりしていたように思います。
ハムスターに限らず、飼育環境が悪いと逃げようとしちゃいますもんね。
ブリーダーの飼育環境は良い環境とは言えないと思いますが、それでも繁殖して増えるのは、必要以上に構わず、視線や足音などの天敵(人間)からのストレスが少ないからだとも思います。
「山登魚」さんの引用:
体が大きくて目が綺麗で毛並の美しいハムスター
うちのロボロフスキーハムスターはミルワームを欲しがるので、キラキラとフワフワですが、タンパク質の摂りすぎが心配です。
「山登魚」さんの引用:
インゲン豆は中南米原産で、地域に自生する植物ではなく、農作物です。
基本的にハムスターに豆は禁止ですが、インゲン豆にはトリプシンが含まれていないんですね。
インゲン豆はレクチンが多いそうです。
「山登魚」さんの引用:
現地に自生する植物は何一つ含まれていないのですが、加工され、保存料等の添加物が含まれたものでない分
栄養素を計算したわけではないですし、自生している植物だと栄養も違いと思いますが、糖質、脂質が多くないでしょうかね?
日本だとヒエやアワなどの穀類を使った鳥のエサがベースになるので、繊維質が多いと思います。
「山登魚」さんの引用:
興味深い論題があれば、聞きに行ってみたいと思っています
ペット以外にも役に立つかもしれないので、参加できるのなら参加するのが良いと思いますよ。
「山登魚」さんの引用:
動物学における研究対象の動物は、経理の方がお金を見るような、割り切った感覚なのでしょうか。
ペットに限ったことではないですが、仕事になると「割に合わない」ことができないんですよね。
業者だと1%に拘ると不効率ですが、飼い主だと1%しか確率がなくても、助けられるのなら助けたいと思いますからね。
間接的に接している人と、直接接している人との差ではないでしょうか?
ここサイトも、趣味の延長だから方針を変えずに続けられているけど、目的がお金になってしまうと、目を引くための内容になってしまうでしょうし。
「山登魚」さんの引用:
ハムスターたちが教えてくれたことを無駄なく蓄積してきた証が
ジャンガリアンハムスターがタイガーになったらヒーター設置とか、本に書いてないですもんね。
ちなみにその後、ミニタイガーが発動し、ヒヨコ電球を追加したら収まりました。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
ハムスターに限らず、飼育環境が悪いと逃げようとしちゃいますもんね。
同書ではハムスターが逃げることを前提にしていて、ゆで卵やキャベツ等、匂いの強い食べ物をバケツの中に置き、階段状に平積みにした本を横付けにして、バケツに誘導する仕掛けを紹介していました。
「管理者」さんの引用:
ブリーダーの飼育環境は良い環境とは言えないと思いますが、それでも繁殖して増えるのは、必要以上に構わず、視線や足音などの天敵(人間)からのストレスが少ないからだとも思います。
同書では、ケージが小さ過ぎて運動量が足りない場合に、後肢を引きずる「ケージ麻痺」が起こると述べられていました。
狭いケージで、巣箱も回し車もなく、散歩もできず、他のゴールデンハムスターのケージが多数収められた飼育小屋のストレスはかなりのものではないかと思うのですが、人間に監視・干渉されるストレスは、それを上回るんですね。ということは、ペットショップの環境は、相当のストレスになりそうです。
この30年間で、ヨーロッパの飼育環境が変化しているかどうかも気になっています。
「管理者」さんの引用:
うちのロボロフスキーハムスターはミルワームを欲しがるので、キラキラとフワフワですが、タンパク質の摂りすぎが心配です。
あ、またロボロフスキーの魅力に誘惑されます…
うちでは秋からミルワームのケースを温かい部屋の窓際に移したところ、早くも年明けからサナギラッシュが始まっています。でもこの時期は羽化不全ばかりで、脱皮を手伝ってやってもうまく羽を伸ばせず、すぐにひっくり返ってしまってしっかり食べられず、ゆっくりと時間を掛けて餓死します。色が変わる前にうちのジャンガリアンにあげたほうが、苦しみを長引かせなくていいのかなと迷っています。
病気の症例を除けば、管理者様が撮られた動物たちは、どの子も健康で毛艶がよくて力強く、目もキラキラしていて、ショーがあったら優勝しそうです。ペットの運搬の是非が問われる日本では、ハムスターショーの開催は現実的ではないでしょうけど。
「管理者」さんの引用:
基本的にハムスターに豆は禁止ですが、インゲン豆にはトリプシンが含まれていないんですね。
インゲン豆はレクチンが多いそうです。
インゲン豆の項、読み返しました。膵臓の働きを助けてタンパク質の消化を促すトリプシンがなくて、胃腸や腎臓に負担をかけるレクチンが多いなら、ハムスターが食べていい要素はないですね。捕まったハムスターは、それしか食べ物がなかったのでしょうか。
「管理者」さんの引用:
糖質、脂質が多くないでしょうかね?
日本だとヒエやアワなどの穀類を使った鳥のエサがベースになるので、繊維質が多いと思います。
なるほど、太ってしまいそうですね。うちでは粟の穂や小鳥のエサでも米パフやコーンマッシュでも、おやつにあげると何でも喜んで食べるので、内容は飼い主側が管理しなければいけないと思いました。
「管理者」さんの引用:
ペット以外にも役に立つかもしれないので、参加できるのなら参加するのが良いと思いますよ。
20年前、愛知万博に日帰りで行った時、かなり予定がタイトだったので、今大会は発表されるテーマを見て、参加するかどうか決めたいと思います。
このエリアの閲覧は会員専用に設定されています。
閲覧するには、[ ログイン ] してください。
の中で教えて頂いた某会も、資格を問わず会員になれるようですね。
というか、スポンサーを増やす目的で、会員の間口を広げる団体は少なくないのかも知れません。一般会員の会費はどこも高いのに驚きました。
「管理者」さんの引用:
ここサイトも、趣味の延長だから方針を変えずに続けられているけど、目的がお金になってしまうと、目を引くための内容になってしまうでしょうし。
エサや床材等の消耗品について、私はいつもお世話になっている複数のネットショップでまとめ買いしがちなのですが、管理者様が自腹を切ってサイトの維持費を負担しないで済むように、できる範囲でリンクから買うようにしようと反省しました。
「管理者」さんの引用:
ジャンガリアンハムスターがタイガーになったらヒーター設置とか、本に書いてないですもんね。
ちなみにその後、ミニタイガーが発動し、ヒヨコ電球を追加したら収まりました。
あ、遂にミニタイガーのケージにもヒヨコ電球を付けたんですね。
うちでは、去年までは上部ヒーターも稼働していたのですが、今年は下に敷くシートヒーターの面積が広がったせいか、ヒヨコ電球が全く点灯しません。この時期に点灯しないなら、もう永久に付かない気がしてきました。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 管理者
「山登魚」さんの引用:
同書ではハムスターが逃げることを前提にしていて
昔、野良ネズミをプラケで飼っていたことがありますが、ケージに穴を開けて逃げられてしまいました。
子供の頃から飼っている個体とは違って、元の環境に戻りたいと思うでしょうし、人間が怖いと知っている個体なら、ハムスターでも逃げてしまうのでしょうかね?
「山登魚」さんの引用:
同書では、ケージが小さ過ぎて運動量が足りない場合に、後肢を引きずる「ケージ麻痺」が起こると述べられていました。
精神的なことではなく、ギプス固定後にリハビリをしないときのような、関節拘縮なんでしょうかね?
ケージの中の広いスペースに、隠れ場所を作るために空き箱を置いたりすると、障害物を除けるためにクネクネ歩いてきたりジャンプして乗り越えるのは、健康にも良さそうですね。
「山登魚」さんの引用:
でもこの時期は羽化不全ばかりで、脱皮を手伝ってやってもうまく羽を伸ばせず
我が家だと、この時期ハムスターとミルワームを飼っている部屋の室温は、平均10~15度くらいなのですが、時々サナギになる個体がいる程度で、羽化まではいかないですね。
「山登魚」さんの引用:
管理者様が撮られた動物たちは、どの子も健康で毛艶がよくて力強く、目もキラキラしていて、ショーがあったら優勝しそうです。
私があまり相手をしないから、私が近くにいるときは感覚器官をフルに使っているのではないかと思ってます。
「山登魚」さんの引用:
捕まったハムスターは、それしか食べ物がなかったのでしょうか。
よく慣れたハムスターは、人が手に持っている物は何でも食べ物だと思ってしまうくらいですが、逆に強くストレスを感じている個体は偏食しがちですからね。
「山登魚」さんの引用:
の中で教えて頂いた某会も、資格を問わず会員になれるようですね。
昔は、素人お断りのマニア集団だったんですがね。
「山登魚」さんの引用:
スポンサーを増やす目的で、会員の間口を広げる団体は少なくないのかも知れません。
実際には業者からの協賛金なのかもしれないですね。
ボランティアするにもお金は必要だけど、お金が絡んだり組織が大きくなると、目的が変わってきたりするので、情報を得るときは何が目的か、そうすることで誰が得をするのかを、注意した方がいいですね。
本来の税金の使い方なんかも、毎日ニュースになってますからね。
「山登魚」さんの引用:
できる範囲でリンクから買うようにしようと反省しました。
同じモール内なら他店や別の商品を買っても紹介料が入るので、地味に助かってます。
衝動買い程度に有効期間が短くなって、小さいサイトが減った理由にもなってますけど。
「山登魚」さんの引用:
あ、遂にミニタイガーのケージにもヒヨコ電球を付けたんですね。
投稿しようと写真撮ってますが、文章の準備ができてないです。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「山登魚」さんの引用:
ゴールデンハムスターも薄明薄暮性だとすれば、(中略)同じ部屋で一緒に暮らす動物も、深夜活発になるジャンガリアン等のハムスター(野生下の夜間は過酷過ぎて、よほど捕食者が少ないのでしょうか)よりも、ウサギや昼行性の動物(人間も含む)のほうが夜中静かに眠れて、
上記は前トピックでの書き込みですが、今更ながら気付いたので訂正します。ジャンガリアン等、その他のハムスターについても、現時点では夜行性か否か断言できないですよね。それに、
「管理者」さんの引用:
私があまり相手をしないから、私が近くにいるときは感覚器官をフルに使っているのではないかと思ってます。
人間がストレスになるのなら、やはりケージの設置場所や接する時間には考慮が必要だと思いました。
「管理者」さんの引用:
昔、野良ネズミをプラケで飼っていたことがありますが、ケージに穴を開けて逃げられてしまいました。
管理者様の飼育部屋にいたネズミの子は、可愛くて毛並みが綺麗な上に、すごく敏捷で力強かったですね。
うちでも高校時代、自分に割り当てられた解剖用のマウスを兄弟が連れ帰ってきて、案の定、全く世話をしなかったので、私が飼っていたことがあります。
クルミの殻を自力で割れず、トイレを覚えず、散歩に出しても嫌がってすぐにケージに帰ってしまい(シマリスが怖かったのかも知れません)、生きる力が弱かったです。
「管理者」さんの引用:
人間が怖いと知っている個体なら、ハムスターでも逃げてしまうのでしょうかね?
ブックトラップは、脱走したハムスターの仕掛けを使って捕まえる方法にも載っていましたね。その飼育書の著者の方は、イギリスの飼育書を参考にしたのかも知れません。
「管理者」さんの引用:
精神的なことではなく、ギプス固定後にリハビリをしないときのような、関節拘縮なんでしょうかね?
こちらも既に、
回し車やケージが原因で体が麻痺するの中で、専門家の方同士で議論されていて、ハムエッグで大きい回し車を勧めている論拠の1つだと思いました。
「管理者」さんの引用:
我が家だと、この時期ハムスターとミルワームを飼っている部屋の室温は、平均10~15度くらいなのですが、時々サナギになる個体がいる程度で、羽化まではいかないですね。
うちでは去年まで夜間置いていた玄関がその位の温度なのですけど、日当たりは全くなく、置き場所はまだ検討の余地があると思いました。
年明けに羽化したのは5〜6匹で、サナギは今数えたら89匹いました。幼虫もサナギも、暖かい時期と比べて成長はゆっくりしています。
「管理者」さんの引用:
強くストレスを感じている個体は偏食しがちですからね。
先代のジャンガリアンハムスターをお迎えする時、ショップで勧められて、ペレットと一緒にミックスフードも購入していたのですが、好きなものばかり食べてそうでないものはずっと残っていたので、ミックスフードはその一袋で終わりにし、次からはネットで、特に好きだったヒマワリの種と米パフ、コーンマッシュを単品で購入していました。
先代の子には、はじめのうちよく噛まれていたのもあり(だから売れ残っていたのかも知れないのですが)、今思えばストレスを溜めていて偏食していたのかなと思いました。
「管理者」さんの引用:
昔は、素人お断りのマニア集団だったんですがね。
ますます魅力的ですね。
うちから車で6分の場所にD施設があり、一度行って、お会いしてみたいと思っています。
「管理者」さんの引用:
実際には業者からの協賛金なのかもしれないですね。
なるほど、取引先であるメーカーからの協賛金があると、歯に衣着せぬ発言はしにくくなりそうです。気を付けたいと思います。
「管理者」さんの引用:
同じモール内なら他店や別の商品を買っても紹介料が入るので、地味に助かってます。
新たに飼育頭数を増やさない限り、単品で送料無料になるような高額用品は購入しないので、そのような仕組みであることを教えて頂けると、安心して好きなショップでまとめ買いできます。
「管理者」さんの引用:
投稿しようと写真撮ってますが、文章の準備ができてないです。
たまに新しい記事が出るのも、読み返していつの間にか少し変わっていた記事を発見するのも楽しみにしています。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 管理者
「山登魚」さんの引用:
クルミの殻を自力で割れず、トイレを覚えず、散歩に出しても嫌がってすぐにケージに帰ってしまい(シマリスが怖かったのかも知れません)、生きる力が弱かったです。
チャイニーズハムスターに関してもですが、動物の扱いに慣れていない人が扱いやすい(大人しい)個体は、実は弱い個体ではないのかと思ってしまいますね。
ふれあい動物園の個体が早く亡くなることも、人間に逆らう気力がないのかもしれないですし。
ついでに、ハムスターではクルミの殻やピスタチオの殻は割れないです。
「山登魚」さんの引用:
その飼育書の著者の方は、イギリスの飼育書を参考にしたのかも知れません。
多分そうですね。古いの飼育書でも、何度か見たことがあります。
「山登魚」さんの引用:
回し車やケージが原因で体が麻痺するの中で、専門家の方同士で議論されていて、ハムエッグで大きい回し車を勧めている論拠の1つだと思いました。
ゴールデンハムスターだと冬の4ヶ月くらい、巣箱に引きこもって、散歩どころか、たまにしか回し車を回さなくなります。
ペットとして飼われている個体だと、体が鈍らない様に、自分でコントロールしているんだと思います。
「山登魚」さんの引用:
そのような仕組みであることを教えて頂けると
推し活や投げ銭とかなかった時代は、そうやって応援してたのを思い出しました。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
ふれあい動物園の個体が早く亡くなることも、人間に逆らう気力がないのかもしれないですし。
先週立ち寄った隣県の公園内にはふれあい動物園があり、そこでふれあえる動物のうち、モルモット、ゴールデンハムスター、ハツカネズミ、ヒヨコについては、この時期は寒いためお休みになっていました。
一方、シマリスの展示エリアには、正午近い温かな時間帯に1匹だけ出てきていて、冬眠しない種類なのかなと思いました。
「管理者」さんの引用:
ついでに、ハムスターではクルミの殻やピスタチオの殻は割れないです。
うちにはオニグルミにも使えるくるみ割りがあるのですが、ここ数年、殻付きのくるみを全く買っておらず、たまに人間用のヘーゼルナッツの殻を割るくらいです。
「管理者」さんの引用:
ゴールデンハムスターだと冬の4ヶ月くらい、巣箱に引きこもって、散歩どころか、たまにしか回し車を回さなくなります。
ペットとして飼われている個体だと、体が鈍らない様に、自分でコントロールしているんだと思います。
うちのジャンガリアンハムスターも、お迎えした当初ほど回し車を使わなくなってきました。
散歩は、プラスチック製の茶碗をケージ入り口で見せると自分から乗ってきて(空母の昇降機のようです)、床に降ろすとお気に入りのキャスター下へまっすぐ向かい、満足すると再び戻ってきて自分で茶碗に乗ってくるのですが(一度、気付かなくて、つつかれました)、この頃は降りた瞬間、再び乗ってくることも増えてきました。
行きたくないなら茶碗に乗らなければいいのに、オヤツをもらうためのルーティーンになっているのでしょうか。
さて、昨日はネットで論文を検索しました。
前にアハロニ氏を調べた際、日本語ではヒットしなかったのに、英語表記では幾つか出てきていたことから、今回も英語で入力してみると、あっさり出てきました。
ところが、手始めに、初めて野生のゴールデンハムスターと出会った人物とされるアレキサンダー・ラッセル氏の著作“The Natural History of Aleppo”を入力すると、いきなり電子書籍版がヒットし、全324頁に目を通したところでその作業が途方もないことに気付いて(しかも初版だったようで、ハムスターらしき記述は見当たらず)、とりあえずショートカットしてガッターマン氏の論文から見ていくことにしました。
以下、時系列に沿って内容を紹介します。
引用:
「実験動物における時間帯とさまざまなストレス要因に対するストレス反応」実験動物科学ジャーナル 1997年5月
夜行性ゴールデンハムスターにおける概日(一日の)活動リズムは、消灯後に主なピークを迎える単峰性であった。24時間の平均(+/-SD)は、 心拍数 324+/-18bpm、深部体温37.5+/-0.5℃および活動 114+/-123単位/5分で、メスの平均体温はオスよりもやや高く (+0.4℃)、平均活動レベルはやや低かった(40%)。
ストレス反応は休息時間(つまり明るい時間帯) に著しく強くなり、その結果、ストレス要因の順位は、ハンドリング<膣スメア(膣の奥についたおりものを軽くこすって採取する)<侵入者/居住者との対決<ケージの変更<グループ化となった。性別によるストレス反応の違いはなかった。
引用:
「メスのゴールデンハムスターにおける社会的ストレスの行動と黄体への影響」生理学と行動 2000年4月
単独飼育であったゴールデンハムスターを群れ飼育にし、その社会的ストレスの影響を研究した。
2匹のメスを5週間一緒に飼育すると、群れ内でいつも強い個体が決まっている訳ではないが、攻撃性の強さは発情期に最大となった。実験後、比較対象としての単独飼育のハムスターは体重が3.6%だけ増加していたのに対し、群れ飼育のハムスターは25%増加した。
群れ飼育のメスの血漿プロゲステロン値は単独飼育のメスより60~70%高く、副腎と卵巣の絶対質量は群れ飼育のメスの方が高かったが、相対質量に差はなかった。単独飼育のメスでは両臓器の重量と体重が比例していたが、群れで飼育されたメスでは、体重と卵巣の重量のみが比例していた。
群れで飼育された個体では黄体の数と大きさが増大しており、これが血漿プロゲステロン力価の上昇の原因であると思われる。このことから、群れで飼育されたメスのハムスターに社会的ストレスがあることが分かる。
引用:
「野生ゴールデンハムスターの現在の分布と生態に関する記録」動物学ジャーナル 2001年7月
1997年9月と1999年3月の2回の調査が行われ、 シリア北部にゴールデンハムスターが現在も生息していることを確認した。アレッポ近郊の様々な場所で、メス6匹とオス7匹が捕獲された。 メス1匹は妊娠しており、6匹の子を出産した。
合計で30個の巣穴が見つかり、そのうち23個の構造が調査された。居住可能な巣穴には、成獣が1匹のみ、巣穴の深さは36~106cm(平均65cm)だった。構造は単純で、巣室に通じる垂直の入口が1つと、さらに少なくとも1つの餌室があった。巣穴全体の長さは平均200cmで、最大900cmまで伸びることがある。巣穴のほとんどは農地で発見され、マメ科植物の栽培地が優先された。
19匹のゴールデンハムスターはすべてドイツに移送され、アレッポ大学から提供された3匹の野生個体とともに新しい繁殖種を形成している。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
引用:
「野生および実験室のゴールデンハムスターの同調および自由走行条件下での活動リズム」2001年12月
ゴールデンハムスターの非常に堅牢な概日活動リズムは近親交配の影響なのか、 それともこの種に特有のものなのか、野生ハムスターと実験室のハムスターを比較した。
測定の結果、野生ハムスターと実験室ハムスターは、両方とも非常によく似た活動リズムを示した。全てのハムスターが明暗サイクルの暗い時間帯で24時間の総活動の約80%を示し、毎日のリズムの堅牢性も同様であった。
しかし、両方の測定において野生ハムスターのほうが個体差は多く見られた。全ての動物はほぼ明暗サイクルの暗い時間帯でのみ回し車を使用したが、野生ハムスターは3倍も活動的であった。恒常暗闇で測定された周期の長さは、野生 (23.93時間+/-0.10時間)の方が実験室ハムスター(24.06+/-0.07時間) よりも短かった。光誘発性の位相変化に差はなかった(約1.5時間)。
要約すると、これらの結果は、実験用ハムスターが野生型とあまり変わらないことを示している。
引用:
「ゴールデンハムスターの発情周期の非同期性」ホルモンと行動 2002年9月
ゴールデンハムスターは、群れの中で優位に立つ個体の発情周期と同期化していくと説明されてきたが、最近、J.C. Schank (2000)がコンピューターによるシミュレーションから、周期の同期化を示す証拠はないという結論を下した。そこで長期実験を用いて確認してみると、実際に発情周期の非同期が観察された。
単独で飼育されたメスのゴールデンハムスターは、近隣の個体と同調し、物理的に接触していたが、2~3週間後に4日周期が非同期になった(個体によって、5日周期も見られた)。発情周期の非同期により、受精の可能性が低い場所(冬眠後、劣悪な生息地など)ではメスの生殖成功率が高くなることが明らかになった。
引用:
「野生由来および実験室由来のゴールデンハムスターの体重、身体測定値、臓器重量の比較研究」実験動物 2002年11月
家畜化された実験用ゴールデンハムスターと野生の同種との間の差異を調べるため、両系統の子孫を個別および単性群で飼育した。
様々な臓器の絶対質量と相対質量を測定した結果、実験用ハムスターは食餌摂取量が多いほど体重が増加したが、相対脂肪値は両系統で同じであったため、太ってはいなかった。身体測定値(体長と耳の長さ)ではわずかな違いしか見られなかった。
体重から推測できるように、臓器(脾臓、腎臓、副腎、精巣、精巣上体、卵巣)は実験用ハムスターの方が重いことが分かった。腎臓を除いて、相対値についても同じことが言えた。体脂肪と副腎のみ、両系統で明確な性差が見られた。さらに、集団飼育されたハムスターでは、脾臓、腎臓、卵巣、体長と体重、体水分、体脂肪が増加した。
結論として、実験室で飼育されたハムスターと野生由来のハムスターの間に大きな違いは見られなかった。
引用:
「ゴールデンハムスターの回し車活動と体組成」生理学と行動 2004年10月
回し車での活動の影響を、52週間にわたってオスのゴールデンハムスターで評価した。
実験開始から4か月後、回し車を利用できるハムスターは、利用できないハムスターよりも大幅に体重が増え、摂食量はほぼ2倍、除脂肪量(FFM)、全身水分量(TBW)、粗脂肪量 (CFM)の絶対値が増加した。しかし、これらの絶対的な差とは対照的に、相対値に差はなく、したがって一般的な体組成は回し車活動の影響を受けなかった。腎臓、精巣、精巣上体の絶対値については、異なる臓器質量が設定された。
体調の改善を示す今回のデータから、回し車はゴールデンハムスターの動物福祉を高める有用なエンリッチメント(飼育動物が自然に近い行動を取れるように、飼育環境に工夫を凝らすこと)であるという仮説が導かれる。
引用:
「近親交配の結果、実験室由来のゴールデンハムスターと野生由来のゴールデンハムスターの繁殖成功率に生じた差異について」行動生態学と社会生物学 2006年6月
実験用ゴールデンハムスターはすべて、1930年のきょうだい同士の交配から生まれた。
この極端な創始者効果のため、家畜のゴールデンハムスターは最もボトルネック(ある集団の個体数が非常に少なく、さらにその子孫が再び繁殖することにより、遺伝的多様性の低い集団ができること)になっている動物集団の1つであると考えられているが、家畜のハムスターは、一般的に使用されている繁殖用ストックにおいて、近交弱勢の明らかな兆候を示さない。
潜在的に隠された近交効果の存在を探るため、実験室 (lab) と野生由来 (wild)のゴールデンハムスターの繁殖成功を比較した。発情期のメスを実験室および野生のオス(F1)と連続して交配させ、最後にオスの繁殖成功を、遺伝的変異性、性行動、および異なる精子特性と比較した。
両方のハムスター系統は、遺伝的多様性において予想された大きな差を示した (H wild = 0.7120.062 対 H lab=0.0070.007)。野生のオスの生殖成功率は、 実験室のオスのそれを大幅に上回った(子どもの 87% は野生のオスによって生まれた)。
野生のオスと実験室のオスの性行動の差は、ほとんど見られなかった。実験室のオスの生殖成功率の低下は、その正確な生理学的原因は不明だが、隠れた近親交配の影響であると結論付けている。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
引用:
「ゴールデンハムスターが飼育下では夜行性でありながら、自然界では昼行性であることについて」生物学レター 2008年4月
概日活動リズムは動物の間でほぼ普遍的であり、その特定のパターンはそれぞれの種がその生態的ニッチ(特定の種が利用できる生息場所や時間帯等の環境要因)に適応したものである。実験室でゴールデンハムスターが示す夜間の活動パターンは極めて一貫性があるため、この種は概日リズムを制御するメカニズムを研究するための主要なモデルである。
しかし、実験室のデータとは対照的に、野生のメスのハムスターはほぼ完全に昼行性であることが分かった。
これらの結果は、ゴールデンハムスターの活動パターンを形成する生態学的変数と、実験室と野生の結果の違いについて多くの疑問を提起する。
引用:
「深い床材で飼育されたゴールデンハムスターの概日活動リズムの非同期化」生体リズム研究 2009年12月
野生では、ゴールデンハムスターは深い巣穴に生息している。ここでは、エンリッチメントとしての床材が概日活動リズムに及ぼす推定効果について調査する。
単独で飼育されたオス45匹 (1群あたり15 匹)で、3つの異なる床材の深さ (10cm、40cm、 80cm)を調査した。活動開始は床材の深さが浅いグループでは消灯とよく一致したが、40cmと80cmのグループでは床材の深さと共に活動リズムは自由に進み、中程度及び深い床材のハムスターは、全てが自ら巣穴を作り、その中で生活した。
低床材群のハムスターは明暗サイクルに継続的にさらされていたため、活動リズムを同期させることができた。床材の深さはゴールデンハムスターの概日リズムに影響を与える可能性があり、時間生物学的研究を行う際にはこれを考慮に入れる必要があると結論付けた。
引用:
「野生のゴールデンハムスターの採餌行動」動物行動学ジャーナル 2011年5月
採餌理論では、動物はリスクを最小化しながらエネルギーを最大限に得るべきだとされており、その最大のリスクは通常は捕食である。
2005年と2006年の春、自分たちはトルコ南部の自然の生息地でメスのゴールデンハムスターの採餌行動を記録した。メスのゴールデンハムスターは、平均5.5分間の一連の採餌行動で、1日平均64分間地上にいた。授乳中のメス2匹は、行動回数と各行動の長さの両方を増やすことで、16日間で巣穴から出ている時間を6~8倍に増やした。
これらの結果は、ハムスターが巣穴の外で過ごす時間がほとんどないためリスクが最小限に抑えられることを示しているが、巣穴の外で過ごす時間はハムスターのエネルギー需要と関連していることも示している。エネルギー需要の高い授乳中のメスは、授乳していないメスよりもはるかに大きなリスクにさらされている。
1997年と1999年に野生のハムスターを捕獲したのはガッターマン氏で、この論文だけ閲覧数が突出していました。メス6匹+オス7匹+妊娠していたメスから後日生まれた6匹=19匹ですね。
また、2005年と2006年には、捕獲はしていないものの、野生のハムスターを観察できていたことも分かりました。
巣穴の長さの平均値については、以前大学で見つけた本の中で言及されていたものと異なっており、そちらの根拠論文と発表年も確認が必要だと思いました。
また、巣穴付近にあったマメ科植物について、私が思い出したのは、中世ヨーロッパの三圃式農業に利用されていたクローバーです。三圃式農業とは、農地を冬穀(小麦類)・夏穀(大麦類)・休耕地の3つに区分して、それらをローテーションで使用していく農法で、休耕地にはクローバーを植えて家畜を放牧し、クローバーを食べさせてその排泄物を肥料とすることにより、地力の回復を図るというものでした。
たとえ巣穴付近にあったマメ科植物がインゲン等の農作物であったとしても、マメ科が植えられた農地は栄養が豊富で活力があるので、野生の動植物も、マメを食べる以外の目的もあって集まってきた可能性もあるのではないかと思いました。
また、先に紹介したイギリスの飼育書の著者であるマッケイ氏はゴールデンハムスターが薄明薄暮性であるとしていましたが、ガッターマン氏は野生下においては昼行性、飼育下では夜行性だと論じていました。どちらも正しいと仮定して整合性をつけるならば、マッケイ氏が薄明薄暮性と述べた段階から、10年間で昼行性に移行したということでしょうか。
ハムスターの本能に根差した本来のリズムは夜行性で、ニッチに適応した結果として昼行性を獲得したとしたら、野生のハムスターに夜間どんな危険が生じるようになったのか、もしくは昼間行動することにどのような利点が生じるようになったのか、個人的に興味深いです。
そして(実験に用いた「低床材群」の床材が10㎝というのはさておき)、概日リズムを維持するのに必要な光を感じるために、床材はあまり深くし過ぎないほうがよいという実験結果も、違和感はないながらも興味深かったです。
野生のハムスターの巣穴が光を感じられないほどの深さ(約65cm)であるにもかかわらず概日リズムが狂わないのは、巣穴の外に出た際にリセットしているのだと思うのですが、飼育下でそれが難しいとするなら、ケージの置かれた室内の光量では足りないということでしょうか。
その他に、1つのケージで複数飼育することはストレスも危険も大き過ぎること、巣箱と回し車はあったほうがよいということが、これらの研究結果によって再認識することができました。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
続いて、レッドリストで引用されているその他の論文・著書についても調べてみました。
引用:
Mazin B. Qumsiyeh “Mammals of the Holy Land” Texas Tech University Press 1996(マジン B.クムシエ『聖地の哺乳類』テキサス工科大学出版局 1996年)
こちらはINTERNET ARCHIVEで電子書籍の全文が読めたため、この際、会員登録(無料)しました。これで今度からは海外の論文や著書を探すのに、いちいち大学の図書館まで行かなくても済みそうです。
クムシエ氏はベツレヘム大学のパレスチナ自然史博物館(PMNH)とパレスチナ生物多様性・持続可能性研究所(PIBS)の創設者兼館長で、こちらは一般向けに著された本です。
レッドリストに引用された内容のうち、巣穴が最大9mという記載はありませんでした。ガッターマン氏の論文には巣穴の長さについて言及されていたので、恐らく誤記かと思われます。
ゴールデンハムスターについて書かれていたのは、次の内容です。
シリアン(ゴールデン)ハムスター
シリアンハムスターの体長は155~165mm、尾の長さは10~15mmです。夜行性で、植物だけでなく昆虫やその他の小動物も食べる雑食性です。
シリアンハムスターはルーマニア、ブルガリア、ソ連南西部、イラン、トルコ、シリア、レバノン、イスラエルに分布し、Tristram(1884)は、この種がパレスチナ北部で目撃されたと報告しています。
Aharoni(1930)は、この種がメトゥラで知られていることを報告し、後に(1932)Sieheがメルシナ(レバノン南部)で収集した3つの標本を挙げています。エルサレム・ヘブライ大学の標本は、Qiryat Saideのものです。
近東では、シリアンハムスターは、草原から丘陵地帯までのさまざまな生息地の穀物畑の近くで発見されました (Aharoni、1932、Neuhäuser、1936)。ブラントハムスターよりもはるかに珍しいです。
ヨーロッパと北アメリカで一般的にペットとして飼われているのは基準亜種(シリアンハムスター)で、黄金色、はっきりとした顔の模様、短い尾(後ろ足の長さくらい)が特徴です。現地亜種(ブラントハムスター)の色は主に濃い灰色で、基準亜種よりもずっと濃い色です。
その他、現地の状況や一帯に生息する哺乳類全般について、参考になりそうな内容を、以下簡単に紹介します。
生息地の環境
シリア砂漠は、広大なアラビア砂漠の北部を占めています。イスラエル東部の砂漠は、降水量が少なく (年間20~80mm)、多くの地域が砂丘に覆われています。硬土砂漠には、より多くの植物を育むワディ床があり、水分を必要とする哺乳類が豊富に生息しています。硬土砂漠のもう1つのタイプは、ハマダです。これは、砂利と大きな岩で覆われているものの、その下には植物を育む土壌がある砂漠のアラビア語名です。ハマダには、多くの齧歯類が生息しています。この生息地には、鳥、トカゲ、ヘビ、昆虫、その他の生物も豊富です。
砂漠の拡大により、多くの種(たとえば、ハタネズミ、シカ、ハムスター)が北方への撤退を余儀なくされ、生息範囲が縮小しました。
イスラエルでは、1963 年頃から野生生物を保護するためにいくつかの保護区が設立されています。そのうちの1つ、ヘルモン山は、オオカミ、テン、イノシシ、ハイラックス、リス、ハムスター、ハタネズミなど、豊富な哺乳類動物相を持つ、約186haの小さな保護区です。
また、1966年に設立された王立自然保護協会 (RSCN)は、ヨルダンのいくつかの地域を自然保護区に指定し、運営しています。そのうちの1つ、ダナは、テン、イノシシ、ハイラックス、リス、ハムスター、ハタネズミが生息する、約150km²の山岳森林地帯です。
害獣としての扱い
この地域では7,000~10,000年前に、原始的な定住文化が発見されています。最も古い文明の1つは、メソポタミアに栄えたアッシリア文化です。この文化はすぐに、いわゆる肥沃な三日月地帯 (メソポタミア、シリア、レバノン、イスラエルを含む肥沃な農地) 全体に広がりました。
イスラエルは元々盆地でしたが、1957年に完了した大規模な工学プロジェクトによって、沼地はすぐに干上がり、肥沃な農地が露出しました。そして、高い出生率とユダヤ人の継続的な移民によって増え続ける人口を支えるため、翌年には農作物の食害を防ぐべく、フルーツコウモリの駆除が始まりました。
イスラエルの農民や農業団体によって多くの洞窟が封鎖され、エチレン・ジブロマイドで燻蒸され、1982 年以降はリンデン(ヘキサクロロベンゼン)が大量に燻蒸されました。また、毒を使った齧歯類の駆除も行われ、長年、硫酸タリウムによる毒殺が使用されてきました。
砂漠に生息する動物の特徴
砂漠の植物は、乾季に根や球根に栄養分を蓄える特性があります。このような植物は多くの齧歯類にとって優れた貯蔵食料源となり、齧歯類が多数生息している一因となっています。多くの砂漠の動物は、滅多に水を飲まず、餌となる植物、昆虫、小型脊椎動物から水分を得ているようです。
砂漠では、正午には地表と地下1mの気温の差が大きくなります。外気温は40℃以上になることがありますが、地下1mの気温は20~25℃です。砂漠の動物の多くは夜行性で、日中の厳しい暑さを避けます。薄明薄暮性の動物もおり、朝と夕方の涼しい時間帯にのみ餌を探します。
北部に生息する一部の哺乳類は、冬の間も冬眠し、長期間にわたって心拍数や呼吸数を減らすことで代謝を低下させ、食糧不足や悪条件の時期を回避することができます。
また、多くの哺乳類は、腎臓が尿を濃縮して最小限の水しか排出しない生理学的メカニズムを発達させています。
この地域の動物は、砂や岩の色と毛色が一致しています。砂漠の動物、特に昼行性の種の暗い体色は、熱の吸収を高めます。
寒冷な地域に生息する哺乳類は、厚い毛皮によって寒さから身を守り、断熱しますが、砂漠地帯では、ラクダに見られるように光沢があり、短く、密集した毛によって、熱を反射して周囲よりも低い温度を維持しています。
寒冷な気候に生息する哺乳類は、皮膚の下に均一な層で脂肪を蓄え、これが効果的な断熱材として機能します。砂漠の動物も、食糧不足の時期に対処するために脂肪を蓄える必要がありますが、通常、脂肪は体の特定の場所に集中している点で大きく異なります。体の残りの部分は、熱を放散するために機能しています。
砂地に生息する砂漠の哺乳類の足の裏は、ほとんどが毛で覆われています。
それとは対照的に、岩場に生息する哺乳類は足の裏がむき出しで、そのような生息地でも滑ることなく楽に移動できます。
多くの哺乳類は、中耳の鼓室と乳様突起の部分が拡大しています。広く開けた空間と、熱く乾燥した空気に特徴的な低波伝導率の条件下で聴力を発達させ、方向感覚に役割を果たしています。
この本によると、ゴールデンハムスターは、明るい毛色をしているのでやはり元来は夜行性で、毛並みが艶やかで短毛なのは強力な光を反射して体温の上昇を抑えるためであり、足の裏が毛で覆われていないのは、本来は全くの砂漠よりは岩場を含む丘陵地帯に多く生息していたから、ということが考えられます。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
次に、ヌリ・イイット(Nuri Yiğit)氏は、トルコ・アンカラ大学の動物学者で、ネズミやブラントハムスターの研究が中心のようです。2007年に発表された論文は「哺乳類(齧歯類) におけるアロザイム変異と遺伝的差異」で、ブラントハムスターとシリアンハムスターの遺伝子を比較し、変異が見られたという内容でした。
アロザイム変異とは何ぞや、ということで調べたところ、元々同じ酵素の遺伝子に突然変異が起こって核酸塩基が別のものに置き換わることをいい、酵素としての機能は同じでも、わずかに分子が異なり、電気を流すと移動度が変化するので区別ができるということでした。このアロザイムの比率やその内容を検査することによって、集団を区別したり、種類の分布や交雑などを含めた変化を調べたりすることができるようです。
この研究には、トルコの5か所と、イラン及びシリアの1か所から収集されたブラントハムスターとシリアンハムスター44匹が含まれていました。翌年にガッターマン氏と連名で、野生下のハムスターが昼行性であることについての論文を発表しているので、研究同様、野生種の入手に際してもガッターマン氏と協力関係にあったのかも知れません。
それから、アリ・デミルソイ(Ali.Demirsoy)氏ですが、この方はトルコ・ハジェテペ大学の進化生物学者で、昆虫の研究が中心のようです。2006年の論文はトルコのカズダ国立公園とその周辺で見つかった哺乳類に関する記録でしたが、ゴールデンハムスターに関する記述は見つけることができませんでした(私の探し方がうまくないのかも知れません)。
最後に、ミハイル・ルシン(Mikhail Rusin)氏はウクライナ・シュマルハウゼン動物学研究所の哺乳類学者の方で、ネズミやクロハラハムスターといった齧歯類の遺伝子研究や生息域における危機的状況の報告が中心のようです。2020年の著書及び論文は見つけましたが、ロシア語の翻訳がうまくできず、著者に全文リクエストするのも気が引けるため(2025年2月に論文が出ているので、今もご健在だと思います)、読むことができませんでした。
なお、Wikipediaも英語で入力すると内容も参考文献もかなり異なるものが出てきたので、そちらの方面からも調べる余地はあると思いました。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 管理者
「山登魚」さんの引用:
この時期は寒いためお休みになっていました。
冬毛の個体を触りまくると、毛が抜けたりベタベタになって冬が越せなさそうですよね。
「山登魚」さんの引用:
行きたくないなら茶碗に乗らなければいいのに、オヤツをもらうためのルーティーンになっているのでしょうか。
塹壕みたいなものでしょうか?本能的に窪みに入りたがるようで、手のひらをお椀状にしても乗ってきたりもしますね。
ルーティーンになっている可能性が高いですが、鷲掴みは基本的に嫌がるので、慣れているのなら鷲掴みの方が、何を考えているのか分かりやすくて良いです。
「山登魚」さんの引用:
群れで飼育されたメスのハムスターに社会的ストレスがあることが分かる。
体臭が強くなったり、尿でマーキングしたりと、飼いなれている人なら臭いで分かったりもします。
「山登魚」さんの引用:
実験用ハムスターは食餌摂取量が多いほど体重が増加したが、相対脂肪値は両系統で同じであったため、太ってはいなかった。
脂肪を溜め込んでいないのなら、何らかの方法で代謝をしているので、どこかしらに負担が掛かっているはずですよね。
それが臓器の肥大化(炎症とかも)だったり、ストレスで熟睡できてないとかね。
「山登魚」さんの引用:
回し車を利用できるハムスターは、利用できないハムスターよりも大幅に体重が増え
運動量が増えているので、たくましくなったと考えればいいのかな?
「山登魚」さんの引用:
クローバーを食べさせてその排泄物を肥料とすることにより、地力の回復を図るというものでした。
ハムスターのウンチで、豆農園できそうですね。
クローバー(シロツメ草)は、ハムスターも食べますね。
キャベツが高くなってるので、大根の葉を与えたりしていますが、あまり食べないので、春になったら野草を探しに行きましょう。
「山登魚」さんの引用:
回し車はゴールデンハムスターの動物福祉を高める有用なエンリッチメント(飼育動物が自然に近い行動を取れるように、飼育環境に工夫を凝らすこと)であるという仮説が導かれる。
飼育環境を野生に近づけることではなく、野生に近い行動ができる意味なら、良い言葉ですね。
イライラしたり驚くと、回し車を走って(その場から逃げることで)ストレスを発散したり冷静になる動物なので、必ず回し車は設置した方がいいです。
「山登魚」さんの引用:
また、2005年と2006年には、捕獲はしていないものの、野生のハムスターを観察できていたことも分かりました。
まだ絶滅はしていなそうなのかな?
「山登魚」さんの引用:
野生のハムスターに夜間どんな危険が生じるようになったのか、もしくは昼間行動することにどのような利点が生じるようになったのか、個人的に興味深いです。
飼い主の生活が昼夜逆転していても(フリーランス時代よく反転してました)、そう簡単に昼行性にならないですから、私も昼に行動する理由が知りたいですね。
メスなので体温や気温、摂取カロリー、繁殖時期などに関係して、一時的に反転しているのかな?
例えば、オスに会うと危険な記事とか。
「山登魚」さんの引用:
巣穴の外に出た際にリセットしているのだと思うのですが、飼育下でそれが難しいとするなら、ケージの置かれた室内の光量では足りないということでしょうか。
基本夜行性だし、季節よって日照時間も睡眠時間も違うだろうから、日光で完全にリセットされるかは分からないですし、飼い主の生活音や温度の変化でも、大まかな時間は分かるはずです。
より快適な場所に寝床で休もうとして、深く巣穴を造ってしまい、結果的に巣穴の外の環境変化に気づかないのではないでしょうかね?
あまり慣れていない個体だと、オヤツを早くもらいたくて、わざと飼い主から見える場所で寝たりする個体もいますし。
「山登魚」さんの引用:
Aharoni(1930)は、この種がメトゥラで知られていることを報告し、後に(1932)Sieheがメルシナ(レバノン南部)で収集した3つの標本を挙げています。エルサレム・ヘブライ大学の標本は、Qiryat Saideのものです。
「山登魚」さんの引用:
現地亜種(ブラントハムスター)の色は主に濃い灰色で、基準亜種よりもずっと濃い色です。
以前どこかで見た標本が、ゴールデンハムスターだったのかブラントハムスターだったのか、分からなくなってきました。
体長に差とかありましたか?
「山登魚」さんの引用:
この本によると、ゴールデンハムスターは、明るい毛色をしているのでやはり元来は夜行性で、毛並みが艶やかで短毛なのは強力な光を反射して体温の上昇を抑えるためであり、足の裏が毛で覆われていないのは、本来は全くの砂漠よりは岩場を含む丘陵地帯に多く生息していたから、ということが考えられます。
納得ですね!!
毛の艶が光を反射することは考えれば当たり前だけど、そこまで深く考えてませんでした。
やはり、日中に行動したり、暑いところは苦手ということでしょうね。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
冬毛の個体を触りまくると、毛が抜けたりベタベタになって冬が越せなさそうですよね。
先日立ち寄った公園のふれあい広場は屋外で、お休みになっていて良かったですけど、都内のリス園(確か屋外)や別の隣県の牧場(屋内)等、冬場もウサギやモルモットに触れ合える施設はあります。他県の動物公園や都内外のリス園(いずれも柵や金網で囲われた屋外)のように、小動物を放し飼いにした施設の中で、人間は見ることができるだけで触れず、小動物のほうから触ったり登ったりしてくるかどうかは彼ら次第、といった施設だと、採算が合わないのでしょうか。
「管理者」さんの引用:
手のひらをお椀状にしても乗ってきたりもしますね。
ルーティーンになっている可能性が高いですが、鷲掴みは基本的に嫌がるので、慣れているのなら鷲掴みの方が、何を考えているのか分かりやすくて良いです。
今うちにいるジャンガリアンは全く噛まないし鳴かないのですけど、触られるのをすごく嫌がります。
でも、昨日も散歩の帰りに気付かずにいると、ぽんと足を叩かれたので、茶碗ではなく手のひらをお椀状にしたら、ケージまでおとなしく乗ってくれました。
先週の定期検診でもすぐに猫じゃらしのように手から抜け出そうとして先生にご迷惑をお掛けしたので、もう少し手に慣れてもらえるように頑張ります。
「管理者」さんの引用:
体臭が強くなったり、尿でマーキングしたりと、飼いなれている人なら臭いで分かったりもします。
今いる子(オス)はお迎えして最初の1週間は巣箱の中でおしっこをしていて、トイレを覚えてからも体臭が強く、オスのリス臭に似ています。臭いで身を固めずにはいられないほどストレスを溜めている状況は、何とかしなければと思っています。
「管理者」さんの引用:
脂肪を溜め込んでいないのなら、何らかの方法で代謝をしているので、どこかしらに負担が掛かっているはずですよね。
それが臓器の肥大化(炎症とかも)だったり、ストレスで熟睡できてないとかね。
「管理者」さんの引用:
運動量が増えているので、たくましくなったと考えればいいのかな?
飼育下のハムスターが、食べた分だけ体が大きくなって、筋肉になっていることを願いたいです(前の子も巨漢でしたが、今の子はそれ以上です)。
「管理者」さんの引用:
ハムスターのウンチで、豆農園できそうですね。
クローバー(シロツメ草)は、ハムスターも食べますね。
キャベツが高くなってるので、大根の葉を与えたりしていますが、あまり食べないので、春になったら野草を探しに行きましょう。
豆農園、想像して笑ってしまいました。
でもうちの鉢植えのクローバーは弱ってきているので、春になったらウンチを撒いてみようか本気で考えました。タンポポは、去年ウドンコ病になって抜いてしまったので、また採取しに行きたいです。
キャベツは年末年始にかけて、高過ぎましたね。今は先月より価格が落ち着いてきて、葉に厚みが出てきてみずみずしく、さらに美味しい季節になってきましたけど、まだまだ贅沢食材です。
「管理者」さんの引用:
イライラしたり驚くと、回し車を走って(その場から逃げることで)ストレスを発散したり冷静になる動物なので、必ず回し車は設置した方がいいです。
「管理者」さんの引用:
あまり慣れていない個体だと、オヤツを早くもらいたくて、わざと飼い主から見える場所で寝たりする個体もいますし。
今いる子は、お世話の時間が近付くと巣箱かトンネルの中で準備万端の状態で待ち構えていて、掃除が終わる頃を見計らって出てきます。夜も同様に、消灯するのを待って、回し車で走り始めます。なかなかストレスを発散しきれていないようです。
「管理者」さんの引用:
以前どこかで見た標本が、ゴールデンハムスターだったのかブラントハムスターだったのか、分からなくなってきました。
体長に差とかありましたか?
ブラントハムスター(Mesocricetus brandti、トルコハムスター)は、準絶滅危惧種で、実験用に研究室で飼育されていますが、人に慣れにくく、攻撃的なところがあるため、一般にペットとしては流通していないようです。レッドリストやイイット氏の論文等に目を通したところ、ゴールデンハムスターとの違いや遺伝子解析の内容ばかりで、アフリカからいつ頃移住して、それぞれの亜種がいつ頃分岐したか等、それはそれで非常に興味深いのですが、具体的な体長その他の情報は見つかりませんでした。
それで、実際に入手したことのある動物公園等の情報を含めてまとめると、大体以下の特徴があるようです。
- 体長:17~23cm(うち、尾長は2~3mm)
- 体重:130~250g
- 毛の色は背中側が暗い灰色がかった茶色で、腹側が白色、胸に黒色の毛がある。
- ゴールデンハムスターより少し体が大きく、体つきや顔つきが似ていて、耳と耳の間隔が少し狭い。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
まだ絶滅はしていなそうなのかな?
はい。少なくとも2006年までは生息していたことが分かりました。先に紹介した内容は論文の概要をさらに要約したものだったので、まずは1997年と1999年の調査の内容を報告した2000年の論文について、きちんと全文読み込んだ上で、少し長めに引用します。
目的と方法
ハレ大学 (ドイツ) とアレッポ大学 (シリア) による合同遠征が、1997年の晩夏と 1999年の春に北シリアで実施された。最初の遠征(1997年8月30日~9月13日) の目的は、アレッポ周辺の推定分布域を調査し、ハムスターの適切な生息地を特定することである。ハムスターの探索には、巣穴の位置の特定や、リンゴやメロンのかけらを餌にした生け捕り罠で捕獲する試みも行われた。
村の長老等への聞き取り調査も実施された。ゴールデンハムスターの写真を示し、巣穴の典型的な特徴と、他の近縁種、例えばグレーハムスター(アルメニアンハムスター)等との違いを含む、形態学的特徴について説明しなければならなかった。
1999年3月4日から27日までの2回目の調査では、最も有望なハムスターの生息地に向かった。2台のデータロガーを使用し、全てのハムスターの巣穴の位置は、GPS位置システムを使用して調査した。
結果
合計13匹のハムスター(オス7匹、メス6匹) が、それぞれアレッポ市の北東約50kmと南西約20km にあるアルベル・シャイク‐リッチとアルナズの近くの2か所で捕獲された。成体の平均体重は、オスで99.5±5.9g、メスで76.0±13.7gだった。1匹のメスは妊娠しており、6匹の子を出産した。数年使用されていた巣穴の中で、生後2~3週間の子ども3匹(オス1匹、メス2匹)も発見された。野生のハムスターの色がやや濃いように見えることを除いて、実験動物と比較して明らかな形態学的差異はなかった。
11匹のハムスターが巣穴から掘り出され、地元の農家が巣穴に水を流して他の2匹を捕獲した。背中にかさぶたのある噛み跡がいくつかあったのはメス1匹だけで、他のハムスターは全て怪我がなく、外部寄生虫もいなかったため、健康状態は良好だった。
巣穴の構造
30個の巣穴がマッピングされ、23個のゴールデンハムスターの巣穴の構造が調査された。
巣穴に成獣は1匹以上いなかった。構造は単純で、巣室と、少なくとも1つの餌室に通じる1つの垂直の入り口で構成されていた。巣穴の深さは36~106cmで、平均64.8±17.6cmだった。巣穴全体の長さは平均199.5±92.6cmで、900cmを超えない範囲まで伸びていた可能性がある。巣穴の入り口は直径4~5cmで、長さ18~45cmの垂直トンネルにつながっていた。
ハムスターのいる巣穴のトンネルは常に土塊で塞がれていたが、使用されていない巣穴にはそれがなかった。平均して、塞がれる場所は地表から約22cm下にあった。栓の長さは5~10cmだった。
垂直の入り口の後、トンネルは平らになり、わずかに角度をつけてさらに下方に巣室まで続いていた。巣室は幅10~20cmで、内部は乾燥した植物を巣材とした球形の巣になっていた。このうち2つの巣には、織物の残り、鳥の羽、細断されたプラスチック袋の破片が含まれていた。10~15cmの行き止まりのトンネルは、排尿に使用されたようである。
残りのトンネルは、長さ約100~150cmで、様々な角度で深く伸びており、部分的には食料貯蔵に使用されていた。10個の巣穴には、ヒヨコ豆などの様々な量の緑の植物が含まれていたため、使われている巣穴とみなされた。3つの放棄された巣穴では、古いか腐っている穀物(大麦、雑草)のみが見つかり、残りの巣穴は空だった。3つの放棄された巣穴はヒキガエルが使用していた。
メスとオスの巣穴に違いはなく、これは繁殖期が短いためかもしれない。ただし、発掘された中で最も大きく複雑な巣穴には、メスとその子ども3匹が住んでいた。
15個の巣穴(6個は居住、9個は「空」)が30haの領域にあった。巣穴間の最短距離は38mだった。しかし、ハムスターが住んでいる巣穴間の最短距離は118mだった。
生息地と土壌条件
巣穴は主に、クロハラハムスターの好みと同様に、一年生作物の畑で見つかった。最も頻繁に見られた作物は、雑草、大麦、ひよこ豆、レンズ豆、メロン、トマト、キュウリ、ハイビスカスなどの果物や野菜だった。栽培の種類に応じて畑に灌漑が行われ、通常、2年間の穀物栽培の後には、1年間の豆類栽培が続く。
ハムスターの生息地域で見られる土壌は、石灰岩を覆う砂質粘土質の土壌が主流である。発掘された巣穴はすべて、淡褐色のクロムカンビソル (テラ フスカ) または赤色のロドクロミック カンビソル (テラ ロッサ) の上にあった。どちらの土壌も粘土成分が多く、その結果生じる高い可塑性により、巣穴を掘る動物にとって最適な条件が整えられている。
考察
Aharoni (1932) は、シリアの3つの異なる場所 (アレッポ、ヒリラムン、アザズ) から、Murphy (1971) は、アレッポの近くでゴールデンハムスターを採集した。我々は、アレッポの南西約19kmにある2つの場所でゴールデンハムスターを発見した。さらにアレッポとアカスの東13km と、アザズの東90kmのジャラブルス付近で、3匹のオスが見つかった記録がある。
ゴールデンハムスターの自然生息地は、岩の多いステップまたは険しい斜面と説明されているが、今回の調査ではほとんどが農地の巣穴から発掘された。この発見は、耕作された穀物畑からこの種を記述したAharoni(1932)と一致している。ほとんどの巣穴は、マメ科植物のある区画で見つかった。これは、既存の好みを示している可能性がある。その他、草の茂った土手からは1匹の個体を入手し、灌漑井戸の近くの土手でいくつかの巣穴を特定した。
走る理由と目的地までの移動経路で引用されている飼育書によれば、ハムスター本来の行動範囲は、巣穴を中心に半径10~15mくらいとあり、巣穴は地下30~40cmの深さまで斜めに掘り、そこから横に1m~1.5m続くとありました。
これに対し、ガッターマン氏の2000年の論文によると、
引用:
野生のハムスターの巣穴に関する唯一のデータは、1930年にAharoniが発掘した巣穴で、深さ2~2.5mに巣の位置が示されている(Aharoni、1932、1942)が、これらのデータは我々の調査結果と一致せず、極端な値を示している可能性がある。
とあります。2005~2006年の調査で、ハムスターの行動範囲は半径50cmであることが判明した点(後述)が異なるものの、ここで引用されている飼育書の巣穴の大きさに関する情報はかなり1999年の調査結果に近いです。それにも関わらず、その飼育書の発行年は昭和63(1988)年というのが疑問です。
もしその引用が2000年以降の改訂版でないのなら、マーフィー氏の著書等に書いてあったのかも知れないので、こちらも目を通した方がいいような気がしてきました。
ちなみに、Wikipedia(英語版)のゴールデンハムスターの項には、アハロニ氏の『ゴールデンハムスター』やマーフィー氏の『ゴールデンハムスターの捕獲と家畜化の歴史』が参考文献として引用されていて、英語圏の方がWikipediaを調べれば、どなたでもラッセル兄弟〜マーフィー氏が発見した内容の詳細にたどり着けるということが分かりました(2011年の論文でも、ラッセル兄弟~ガッターマン氏に至る発見の内容が概略されていました)。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
これまでの発見者の一覧表も以下に共有します。
1797 ラッセル&ラッセル(Russel&Russel)
1839 ウォーターハウス(Waterhouse)
1954 レイノルズ(Reynolds)
1902 ネリング(Nehring)
1930 アハロニ(Aharoni)
1962,1972 クメルフォーブ(Kumerfoeve)
1982 ヘンウッド(Ch.Henwood)
1971,1978 マーフィー(Murphy)
1949 アイゼントラウト(Eisentraut)
1986 H.ティチ(H.Tichy)
1991,1996 ドグラマチ他(Dogramaci et al.)
1991,1996,1997 H.ケフェリオグル(H.Kefelioglu)
1999 N.イイット(N.Yigit)
1999,2005,2006 ガッターマン他(R.Gattermann et al.)

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
まずは2点訂正です。
- 2000年の論文で、訳出の精度を原文と照合して確認する作業を怠ってしまいました。「ハレ大学」→「ハレ・ヴィッテンベルクにあるマルティン・ルター大学」です。
- 同じく、2011年の論文にあった行動範囲も、巣穴の半径「50cm以内」ではなく、「50㎝を越えた最も近い餌の供給源である場所まで」でした(後述)。
「管理者」さんの引用:
私も昼に行動する理由が知りたいですね。
次に、ゴールデンハムスターが昼行性であることについての2008年の論文と採食行動に関する2011年の論文(後者は同じ研究チームのサマンサ・C・ラリマー・ブスケ氏らによる共同執筆)は、どちらも2005~2006年の調査をもとに書かれたものなので、同様に全文を読み込んだ上で、合わせて少し長めに引用します。
目的と調査方法
全ての生物は活動と生理学的プロセスにおいて周期的なリズムを示す。これらのリズムのほとんどは約24時間の周期性を持ち、毎日の光周期と同期しているため、種特有の活動パターン (昼行性、夜間、薄明薄暮性など) が生じる。活動の長さとパターンは種によって異なり、いくつかの研究では、捕食者のリスクに応じて活動が変化することが明らかになっている。
ゴールデンハムスターは、実験室では完全に夜行性であり、活動の80%以上は、夜間に発生する。これを踏まえ、我々はトルコ南部でハムスターの本来の生息地での活動パターンについて調査するため、研究プログラムを立ち上げた。
観測は、2005年4月と5月、及び2006年3月から5月にかけて、トルコのエルベイリ付近で実施された。この地域は、半乾燥地帯の草原に囲まれた農地と岩の多い生息地である。対象地域の主な作物はレンズ豆、小麦、大麦で、全て10月に植えられ、5月下旬に収穫された。トウモロコシ、ピーマン、メロンなどの他の作物は、他の時期に植えられることもあった。
シャーマントラップは、夕方遅くにハムスターの巣穴の入り口に配置され、ピーナッツとパンを混ぜたもの(2005年)、またはパン、ピーナッツバター、チョコレート、ひまわり油を混ぜたもの(2006年)を餌として与えた。罠は夜明け直後に点検された。捕獲されたハムスターは性別判定され、体重が測定され、個体識別のために皮下にパッシブ統合トランスポンダー(PITタグ)が埋め込まれ、捕獲された場所に放された。
ゴールデンハムスターの巣穴は通常、入口が1つしかない。我々は、マルティン・ルター大学が設計・構築した野外動物識別システム(FAIS)を対象動物の巣穴の入口に設置し、タグを付けられた各個体の身元と、巣穴を出入りした時刻を記録した。
このシステムは、PITタグアンテナを内蔵したプラスチック製のリングと、上下に約1cm間隔で配置された2つの赤外線光線で構成されている。これらの光線が遮断される順序によって、動物が巣穴に出入りしているかどうかを判断できる。
このようにして、我々は24時間ごとに監視し、動物が巣穴の中にいるか外にいるかを毎秒知ることができた。トランスポンダーの通過と光線の遮断の記録はバッテリー駆動のデータロガーにタイムシグネチャ付きで記録された。この研究では、20匹のメスのデータが分析された。
この自動的に記録された活動に加えて、5人の研究者が、FAISによって自動的に収集されたデータで示される主な活動期間に対応する、およそ6:00~8:00と16:00~19:30の時間帯に動物の巣穴を1日2回観察した。一部の動物は、9:30まで定期的に活動していた。
観察された行動は、筆記用具とボイスレコーダーを使用して、1秒単位でリアルタイムに記録された。観察者は、植物を通して見通せる能力と、動物が観察者に対して感じる警戒感に応じて、巣穴の入り口から5~10m離れた場所に立っていた。
採餌には、食料源への移動、その食料源の調査、植物の一部の切り離し、その部分を頬袋に詰め込み、巣穴に戻ることが含まれる。動物は1回の移動で植物から植物へと頻繁に移動したが、植物の密度や巣穴からの移動距離によっては、特定の採餌行動で何が起こったかを詳細に記述できないことがよくあった。
ほとんどの動物は、可能な限り狭い行動圏を持ち、選択肢がある場合、巣穴は餌の供給源に近い場所を選ぶ。しかしFAISは巣穴の入口の出入りのみを記録するもので、直接観察では植物が密生していたため、ほとんどの採餌行動の総距離を正確に測ることはできなかった。
結果
2005年の野外調査シーズン(4月21日~5月30日)では、成獣のメスのハムスターの活動が39時間24分見られた。これは、動物が巣穴から頭を出した458回の活動であり、これらの例の87%で、動物は巣穴の入口から出て、餌探しのために巣穴のすぐ周囲(50cm)の領域を離れた。
7匹のメスは定期的に観察され(30回以上)、そのうち2つの巣穴で幼獣を観察した。
2006年の野外調査シーズン(3月15日~5月19日)には、成獣のメスの活動は57時間55分記録された。6つの巣穴(うち2つには幼獣が乳離れした)を定期的に観察(30回以上)したところ、巣穴から頭が突き出ている例が712件あり、そのうち85%が餌探しの行動だった。2005年または2006年に少なくとも1回は、さらに9匹の動物が観察された。
データは、Macintoshコンピューター用のSPSS 11を使用して分析された。各対象動物について収集されたデータの量は、40回から150回の採餌行動まで様々だった。
最も頻繁に移動した12個体を直接観察した結果、成獣のメスは1匹平均52分3秒地上におり、平均10.1回の個別の移動があった。FAISのデータは、12個体のうち完全に記録が得られた9個体について、巣穴から平均64分外に出ていたことが示している。
直接観察で収集したデータに基づくと、各行動の平均時間は5分34秒で、この時間のうち14%(43秒)が採餌前の警戒行動に費やされた。警戒行動は、時折の毛づくろいも含まれるが、ほとんどの時間は頭だけを地面から出しているか、巣穴から50cm以内に座って、積極的に餌を集めておらず、しばしば動かない状態であった。
また、全てのメスが午前と午後に活動していたが、活動開始のタイミングは個体によって違いがあった。午前中に活動が多いメスもいれば、午後を好むメスもいた。あるメスは他のメスよりも午前中に活動を開始および終了する傾向があった。メスが午前または午後の活動を行わないこともあった。
確固たる結論を導き出すのに十分な数の母親はいなかったが、2匹の授乳中のメスで採餌時間に劇的な変化が見られたことが記録されている。
これは、ゴールデンハムスターのメスの巣の面積が、他の種と比較して非常に小さいことも、その要因の一つと思われる。
授乳期間2週間で、2匹の母親は1日あたり約30分間餌探しをしていた。これは、我々が観察した他の多くのメスのハムスターの餌探しの時間と同様である。
しかし、離乳前の最後の2週間は、餌探しの時間が着実に増加した。
離乳直前、1匹の母親は1日あたり約3時間、別の母親は1日あたり約4時間出ていた。巣穴から出ている時間の増加は、1回の餌探しの持続時間と1日あたりの移動回数の両方が増加したためである。子が成長するにつれて、警戒行動は大幅に低下したが、これが人間の存在に慣れたためなのか、できるだけ早く餌を集める必要性によるものなのかは不明である。
ほとんどの母親は、子が乳離れすると巣穴を捨てて新しい巣穴に移動するため、巣穴に食料を蓄えていなかった。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
昼行性への適応についての考察
活動リズムには、捕食、気温、湿度、降雨量、食物の入手可能性など、様々な要因が影響を与えることが知られている。
FennとMacdonald(1995)は、通常は夜行性の野生のネズミの日中の活動を観察し、ネズミが夜行性のキツネによる捕食を避けるために日中に活動していることを発見した。日中に人間の迫害にさらされたコヨーテは主に夜行性だったが、迫害がなくなると昼行性の活動パターンを示した。
Levy 他 (2007) は、実験室のゴールデントゲネズミは夜行性であるのに対し、野生のマウスは昼行性であることを発見した。彼らは、野外の環境の手がかりが体内リズムを覆い隠し、野外と実験室で異なる活動パターンが生じると示唆した。
ハムスターの巣穴がある地域周辺では、キツネ、イヌ、コウノトリ、猛禽類、フクロウ、ヘビが時折観察されている。キツネの糞の山から、マークされた1匹のハムスターの無線送信機が見つかった。フクロウの糞の内容物から出てきた歯や骨のうち6%はハムスターのものだった。したがって、我々のハムスターの個体群では捕食が発生することが分かっており、夜間に捕食者からの圧力が高いことを示している可能性がある。
さらに、野生のハムスターは、日中の高い地表温度を避けるために活動を制限していると考えられる。ハムスターの活動パターンが年間を通じてどのように変化するかは不明であるが、毎日の活動の持続時間が短いことから、ハムスターは餌探し、捕食者回避、潜在的な熱ストレスのバランスを取っていると考えられる。
採餌行動についての考察
様々な分類群において、体の大きさと1日の活動時間は相関関係にあり、大型動物ほど活動時間が長くなる。大型動物は、体重の増加に見合った餌を集めるのにそれほど時間が掛からないが、捕食の影響を受けにくく、恐怖心が少ない採餌行動を示す。
しかし、ゴールデンハムスターの1日あたりの活動時間が特に短いのは、サイズだけに起因するものではない。なぜなら、ゴールデンハムスターは1日3~4時間餌を探す他の多くの齧歯類よりも大きいからである。
エジプトスナネズミやアレンビースナネズミなど、頬袋を持つ動物は、頬袋の中に大量の食物を運ぶことができるため、地上で食べるよりもかなりの時間を節約できる。したがって、頬袋はハムスターが巣穴から出ている時間を最小限に抑える能力に貢献していると考えられる。
我々が野外で観察した5月と6月初旬は、レンズ豆、小麦、大麦が成熟する時期で、気温も適度だった。
したがって、我々の調査結果は、ハムスターが巣穴の外で過ごす最小限の時間を表している可能性がある。他の季節には、食料の密度は恐らく低く、この時期の採餌行動の期間は、他の小型齧歯類と同等かも知れない。
文献では、採餌行動の増加はエネルギー需要の増加によるという解釈が支持されているが、体温調節も重要である可能性がある。ハムスターは生まれたばかりの時は変温動物で、最初の数週間は褐色脂肪組織がない。そのため、他の子どもと寄り添ってもあまり暖かくならない。また、子どもは母親の体温に頼っているため、餌探しのために巣を離れる頻度が制限される。
対照的に、子どもが大きくなると、母親の体温を上げ過ぎて、母親が群れから、場合によっては巣穴から出ていくように促すことがある。これは、ラットやドワーフハムスターで実証されている。我々の調査地域では、地面から70cm下に温度ロガーを設置し、調査中、12.0~14.5℃の温度を記録したが、活動時期全体の巣穴にある巣の内部の温度は不明である。
以前、シャーマントラップを使ったハムスターの捕獲方法というトピックがありましたね。
写真のゴールデンの子がのん気過ぎてたまらなかったです。
さて、全文に目を通してみると、活動パターンについては、キツネやフクロウ等、夜行性の捕食者の脅威のほうがより大きかったため、昼行性へと適応したのではないかという推察に納得できました。
そこでなぜメスだけ昼行性なのか、という疑問なのですが、本文には、次の一節がありました。
引用:
(1999年に)捕獲された野生のオスのハムスター10匹をドイツの実験室に移してから4週間後に観察したところ、完全に夜行性のパターンを示したが、(2005、2006年に観察した)野生のオスは24時間を通して活動を示している (R.E.Johnston 2005、2006、未発表データ、Weinert他 2001)。
これは、メスが子育てのために採食行動を増やしたことによって、比較的捕獲も観察も行いやすかったのに対し、オスは捕獲してデータが取れたサンプル数が少なく、昼行性である可能性はあるものの、論文にはできなかった、ということなのかなと思いました。
また、採餌行動については、元々ゴールデンハムスターは岩の多いステップまたは傾斜地に生息していたところ、人口増加に伴って農地が拡大した結果、畑の道端や灌漑井戸の周囲の狭い不毛地帯だけが代替生息地として残されたため、付近の農作物を食料とすることによって、地上での活動時間を減少させていったと思われることが理解できました。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
前回は翻訳したものを長めに要約していたので、念の為、著作権法を確認しました。
第32条① 引用は可能で、昭和55年の最高裁判例によれば、全体の構成として本文が主、引用が従になっていることが必要
第47条の六① 翻訳等による利用も可能
第48条① 出所の明示が必要
なお、2016年の改正により、著作物の保護期間が50年から70年に延長されています。
また、訂正&補足です。
「山登魚」さんの引用:
これまでの発見者の一覧表も以下に共有します。
発見者ではなく、発見の記録ですね。さらに、論文の一覧では発見場所ごとにまとめられていたものを、こちらで引用する際、全体として時系列に直すのを忘れてしまいました。訂正ついでに、備考も併せて引用します。
1797年、ラッセル兄弟による、ゴールデンハムスターの最も古い記述。
1839年、ウォーターハウスによる、恐らくラッセル兄弟が捕獲したタイプ標本。
1902年、ネリングによれば、保存されていたメス1匹がズモッフェン (ベイルート) からベルリンに送られた。
1930年、1匹のメスと11匹の幼体がI. アハロニによって発掘された。
3匹のうち2匹のオスと1匹のメスが飼育されている全てのゴールデンハムスターの祖先である。
同年、別の場所でさらに3匹が I. アハロニによって収集され、頭蓋骨はベルリンにある。
1949年、アイゼントラウトによると、妊娠したハムスターがアンタキヤの東20kmで捕獲され、2匹のオスがドイツに持ち込まれた。この発見は他の人によって確認されておらず、疑問視されている。
1954年、レイノルズによれば、アレッポ総領事J. H. スキーニが生きたハムスターを英国に持ち込んだ。
1962、1972年、クメルフォーブによれば、3匹のハムスターが捕獲され、トルコ (1匹) と米国 (2匹) に送られた。
1971年、マーフィーによって13匹のハムスターが捕獲され、4匹のオスと8匹のメスが米国に移送され、別の繁殖用種が確立された。
1978年、マーフィーによれば、2匹のメスがB. ダンカンによって米国に持ち込まれた。
1982年、ヘンウッドによれば、1匹のオスと1匹のメスが捕獲され、メスは生きたままロンドンに運ばれたが、実験用ハムスターとの交配は失敗に終わった。
1986年、H. ティチによれば、3匹のメスがテュービンゲン (ドイツ) に持ち込まれたが、実験用ハムスターとの交配は失敗した。
1991、1996、1997年、ドグラマチ他によれば、4匹のハムスターが分類学研究のために収集され、分類学研究のためにサンプルが採取された。
1999年、N.イイットによる、さらなる記録がある(2000)。
1999(+2005, 2006)年、ガッターマン他による。
7匹のオスと 6匹のメスがアルベル (オス3,メス2)、シャイク・リーク (オス1,メス1)、アルナズ (オス3,メス3) で捕獲された。30個の巣穴が地図に描かれ、18個が完全に測定された。
ハムスターはハレ(ドイツ)に運ばれ、新しい繁殖用ハムスターの供給源となった。

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 2
投稿日時:
- 名前
- 管理者
「山登魚」さんの引用:
小動物を放し飼いにした施設の中で、人間は見ることができるだけで触れず、小動物のほうから触ったり登ったりしてくるかどうかは彼ら次第、といった施設だと、採算が合わないのでしょうか。
客層にもよるのはないでしょうかね?
ガン無視されるのも、威嚇されるのも、その動物や個体の魅力なんですけどね。
「山登魚」さんの引用:
でもうちの鉢植えのクローバーは弱ってきているので、春になったらウンチを撒いてみようか本気で考えました。
ウンチを庭に蒔いたらカビが生えたことがあるので、土に混ぜた方がいいです。
「山登魚」さんの引用:
成体の平均体重は、オスで99.5±5.9g、メスで76.0±13.7gだった。1匹のメスは妊娠しており、6匹の子を出産した。数年使用されていた巣穴の中で、生後2~3週間の子ども3匹(オス1匹、メス2匹)も発見された。
メスの方が重いはずの体重が軽いですし、全体的に痩せてるのでしょうか?
私だと、体重が150g以上ないと繁殖させないかな?
「山登魚」さんの引用:
野生のハムスターの色がやや濃いように見えることを除いて、実験動物と比較して明らかな形態学的差異はなかった。
野生の毛色を捨てるのは、家畜化の始まりなんですかね?
「山登魚」さんの引用:
構造は単純で、巣室と、少なくとも1つの餌室に通じる1つの垂直の入り口で構成されていた。巣穴の深さは36~106cmで、平均64.8±17.6cmだった。
広い範囲の調査ではないだろうから、気温ではなく、掘りやすい土や、性格の差で、巣穴の長さが変わるんでしょうかね?
飼育環境でも、巣穴の前に30cmのトンネルは必要ですね。
「山登魚」さんの引用:
ハムスターのいる巣穴のトンネルは常に土塊で塞がれていたが
現地の寒暖の差でしょうか?
ペットだと、冬くらいしか巣穴(巣箱)は塞がないですからね。
「山登魚」さんの引用:
発掘された中で最も大きく複雑な巣穴には、メスとその子ども3匹が住んでいた。
育児部屋を作ったわけではなく、ストレスが強い時期は、巣穴が複雑になる感じかな?
「山登魚」さんの引用:
巣穴間の最短距離は38mだった。しかし、ハムスターが住んでいる巣穴間の最短距離は118mだった。
38mが巣穴が古いからか近いからかは分からないですが、ハムスターを多頭飼いする場合は、118mケージが離れてないと本来はダメなんですね。
そのうち118mの約半分の、半径50mは縄張りとして必要なんでしょうね。
「山登魚」さんの引用:
巣穴は主に、クロハラハムスターの好みと同様に、一年生作物の畑で見つかった。
引っかかっているところなんですが、畑が近いということは、人間の行動範囲(近く?)に住んでいるということですよね。
「山登魚」さんの引用:
ハムスターの生息地域で見られる土壌は、石灰岩を覆う砂質粘土質の土壌が主流である。発掘された巣穴はすべて、淡褐色のクロムカンビソル (テラ フスカ) または赤色のロドクロミック カンビソル (テラ ロッサ) の上にあった。どちらの土壌も粘土成分が多く、その結果生じる高い可塑性により、巣穴を掘る動物にとって最適な条件が整えられている。
掘りやすい土質の場所にハムスターが住んでいたら、そこに人間が畑を作ってしまったのでしょうかね?
「山登魚」さんの引用:
ゴールデンハムスターの自然生息地は、岩の多いステップまたは険しい斜面と説明されているが、今回の調査ではほとんどが農地の巣穴から発掘された。
食べ物が多いと争いにくいので、ハムスター同士の巣穴も近くなるでしょうし、ペットのハムスターでも餌が少ないと一晩で10kmくらい走るらしいので、距離に関しての文献は、実際には巣穴間の距離がもっと遠いのではないかと思っています。
「山登魚」さんの引用:
ハイビスカスなどの果物や野菜だった。
ハイビスカスは意外ですね。寒さに弱いと思っていました。
蜜を舐めたり、花粉を食べたりするのでしょうかね?
「山登魚」さんの引用:
餌探しのために巣穴のすぐ周囲(50cm)の領域を離れた。
「山登魚」さんの引用:
巣穴から平均64分外に出ていたことが示している。
ペットのハムスターをケージで飼っていても、だいたいそんな感じですね。
「山登魚」さんの引用:
そのうち85%が餌探しの行動だった。
ペットだと、餌の世話は基本1日1回で、餌の採取が1日1回だから、散歩や回し車を走る行動で、餌探しを疑似体験しているでしょうかね?
ペットの場合、植物を採取ではなく、飼い主相手の狩りに近いですけど。
「山登魚」さんの引用:
確固たる結論を導き出すのに十分な数の母親はいなかったが、2匹の授乳中のメスで採餌時間に劇的な変化が見られたことが記録されている。
他の個体と、餌の採取時間が被らないように、弱いメスが昼行性になる感じなんですかね?
逆に産子数が多い個体とか。
「山登魚」さんの引用:
ハムスターは生まれたばかりの時は変温動物で、最初の数週間は褐色脂肪組織がない。そのため、他の子どもと寄り添ってもあまり暖かくならない。また、子どもは母親の体温に頼っているため、餌探しのために巣を離れる頻度が制限される。
変温動物は、かなりビックリです。
巣穴が保温されていることもあると思いますが、単独で子育てするゴールデンハムスターは、親がいない間の体温の維持が難しくなるので、多少体温が下がっても大丈夫なんですね。
けどハムスターは多産な動物で、子供が1匹で過ごすことはないし、巣に餌を溜め、ほお袋がある動物だから餌の採取のために巣穴を空ける時間が少ないと考えると、温度管理は油断できないですね。
「山登魚」さんの引用:
採餌行動については、元々ゴールデンハムスターは岩の多いステップまたは傾斜地に生息していたところ、人口増加に伴って農地が拡大した結果、畑の道端や灌漑井戸の周囲の狭い不毛地帯だけが代替生息地として残されたため、付近の農作物を食料とすることによって、地上での活動時間を減少させていったと思われることが理解できました。
人のいないところに住んでいたのに、畑を作るために人が生息地に近づいてきたから、畑の作物を食べて楽に過ごす生活に変えたんですね。
ペットが人に懐く過程のような感じですね。
人が作る農作物を食べることで、寿命は伸びたんでしょうか?
元々粗食な動物なので、繁殖力は上がるけど、寿命は縮んでいる気もしますね。

長文過ぎて諸々心配です
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
ガン無視されるのも、威嚇されるのも、その動物や個体の魅力なんですけどね。
先月立ち寄った公園でそう思われる方は少なかったようで、人間をガン無視していたシマリス小屋の前は人がまばらでしたが、餌をもらえることを期待して駆け寄ってくるヤギや羊のエリアは家族連れで賑やかでした。
「管理者」さんの引用:
ウンチを庭に蒔いたらカビが生えたことがあるので、土に混ぜた方がいいです。
試されたことがあるのですね。
うちでは、小さなバケツタイプのコンポスト2つをローテーションしながら、野菜・果物の皮や花ガラ・剪定した葉を堆肥化しています。このサイズですと、ペットの糞はEM(嫌気性の微生物)ぼかしの処理能力を超えているようなので、もう少し暖かくなったら、植木鉢の土(好気性の微生物)に、時間を掛けて分解してもらおうかなと思っています。
「管理者」さんの引用:
ハイビスカスは意外ですね。寒さに弱いと思っていました。
蜜を舐めたり、花粉を食べたりするのでしょうかね?
庭木図鑑・植木ペディア等によると、ハイビスカスは園芸種で、ご指摘の通り寒さに弱く、温暖な気候下では多年草として育てられますが、最低気温が10℃を下回る地域では屋外で越冬できず、1年草として扱われることもあるそうです。
ハイビスカスの元となった野生種の1つ・仏桑花は中国南部から東インド原産、あるいはインド洋諸島から東アフリカで成立した雑種植物とする説もあり、中国では花を食用染料としたり、漢方で花を薬として用いたりするそうです。
私は子どもの頃、ツツジやサルビアの花を摘んで、蜜を吸うのが好きでした。
「管理者」さんの引用:
広い範囲の調査ではないだろうから、気温ではなく、掘りやすい土や、性格の差で、巣穴の長さが変わるんでしょうかね?
飼育環境でも、巣穴の前に30cmのトンネルは必要ですね。
巣穴を拡張したり餌を蓄えたりする欲求の強さは、ハムスターによってかなり違うのはよく分かります。
今うちにいるジャンガリアンは、相変わらず巣箱の隅を齧ったり、たまに一晩でケージの床材を底に敷いた新聞紙が見えるくらいに掘り返して、ウッドチップの山や谷を作ったりします(ウッドチップと新聞紙で巣穴を作ったケージ内のイメージ)。一方、大好きな焼き芋やブロッコリーをオヤツにあげても、ある程度食べて残った分は持ち帰らず、その場に放置していきます(翌朝には大体なくなっています)。
昨年末に大学で読んだ書籍に記載されていたジャンガリアンハムスターの巣穴の長さはもっと短かったのですが、巣穴と地上を繋ぐトンネルの長さは、ハムスターの安心感に繋がっていることを実感します。
「管理者」さんの引用:
現地の寒暖の差でしょうか?
巣穴の入口を土で塞ぐことについては、先述の大学で見た書籍にも書いてあったと思います。
なるほど、日中と夜間の激しい寒暖差を緩和するために外気を遮断することは重要ですね。私は、捕食者に臭いで気付かれないようにするためかなと思っていました。
「管理者」さんの引用:
育児部屋を作ったわけではなく、ストレスが強い時期は、巣穴が複雑になる感じかな?
ゴールデンハムスターのメスは、子どもが成体サイズになるまで同居する前提で巣穴を掘っていないとのことなので、ご指摘の通り、巣穴が複雑化するのは、必要性というより、精神的な問題と考えていいのではないかと私も思います。
「管理者」さんの引用:
ハムスターを多頭飼いする場合は、118mケージが離れてないと本来はダメなんですね。
そのうち118mの約半分の、半径50mは縄張りとして必要なんでしょうね。
確かに、その距離の半分が縄張りだと考えると、一般家庭で多頭飼いするために自然環境を再現するのはかなり難しいですね。
「管理者」さんの引用:
掘りやすい土質の場所にハムスターが住んでいたら、そこに人間が畑を作ってしまったのでしょうかね?
はい。2000年の論文には、
引用:
都市化と大規模農業の拡大により、不毛の茂みや生垣などの避難場所が失われることが多くなった。近隣の村々の畑の境界を示す尾根さえも制限され、道路脇と灌漑井戸の周りの狭い不毛地帯だけが、ハムスターの代替生息地として残された。
との記述がありました。
粘土質の土壌は、巣穴には適していても、植物が根を張るには向いておらず、畑を作るには通気性や水はけを良くするための、何らかの土壌改良が必要です。
そんな不毛で狭隘なハムスターの生息地にまで、人間が農地を広げたということのようです。
「管理者」さんの引用:
畑を作るために人が生息地に近づいてきたから、畑の作物を食べて楽に過ごす生活に変えたんですね。
ペットが人に懐く過程のような感じですね。
引用:
本江昭夫「ドメスティケーションとは何か:家畜とは何か」国立民族学博物館学術情報リポジトリ 2010年3月
上記によれば、家畜化するために必要な特性は、以下の通りです。
- 群れで生活すること
- 攻撃的でなく、人間に馴れやすいこと
- 一夫一婦制でなく、早熟で繁殖能力が高いこと
- 敏捷性がなく、取り扱いが容易であること
- 環境の変化に対して鈍感で、幅広い環境要因へ適応できること
- いろいろな餌を食べる習性があること
ハムスターがそうした特性のうちの多くを備えていたからこそ家畜化できたのだとはいえ、2005年・2006年の調査で、観察者の前で毛づくろいをしていたメスがのん気過ぎて、少し心配になりました。
「管理者」さんの引用:
距離に関しての文献は、実際には巣穴間の距離がもっと遠いのではないかと思っています。
「管理者」さんの引用:
散歩や回し車を走る行動で、餌探しを疑似体験しているでしょうかね?
ペットの場合、植物を採取ではなく、飼い主相手の狩りに近いですけど。
そうですね。小麦等の収穫期以外の季節では、基本的により多く餌探しのために時間を掛けているでしょうから、ペットのハムスターも、そうした衝動的な欲求を、散歩や回し車を走る行動によって疑似体験している可能性はありますね。
また、ハムスターの生息地は年々狭められてきたため、巣穴間の距離が昔より狭くなっている可能性も、大いにあり得ることだと思います。人間が住み着く以前に、広い縄張りを持ち、夜の広大な草原を走り回って、乏しいエサを探し集めていた頃の本来の生態は、相変わらず推察の域を出ないままです。
野生の狩りの姿からは程遠いですが、うちのジャンガリアンは、この頃毎回オヤツをもらおうとして入口から身を乗り出し過ぎ、落ちそうになっています。

長文過ぎて諸々心配です
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
他の個体と、餌の採取時間が被らないように、弱いメスが昼行性になる感じなんですかね?
逆に産子数が多い個体とか。
2011年の論文によれば、外に出ている時間の長さは、
あまり観察できなかったオス(数の記載なし)・メス(13匹)<生殖状態が不明で定期的に観察されるメス(5匹)<授乳中のメス(2匹)
の順になっていました。
1999年以前に発見されたゴールデンハムスターも、その内訳を見ると大体がメスでした。
同論文で引用されている諸文献によれば、実験室のハムスターは妊娠中に貯蔵行動が劇的に増加し、妊娠したメスは餌探しを770%も増加させます。
そして、子どもが生まれて授乳期に入ると、母親は餌の摂取量を(場合によっては2倍に)増やし、妊娠中に蓄えたエネルギーのほとんどを使い果たします。さらに、授乳は妊娠よりもはるかにエネルギーを消費するため、失った脂肪組織を再び構築する必要があります。
餌の摂取量の増加の程度は、子どもの数、気温、餌の種類によって異なります。母親の食物摂取量の増加と、離乳期の子ども貯蔵食の消費が相まって、食物貯蔵量が減少する授乳期の終わり近くには、より多くの採餌努力が必要になる可能性がある、とのことです。
2005年・2006年の調査では、巣穴にいる子どもはタグ付けされておらず、何匹いたかは分からないのですが、確かに産子数が多い個体は、採餌行動を増やす必要がありますね。
では次に、なぜオスは日中あまり活動しないのか、なぜ同じメスでも日中の活動量に差があるのか。こちらについても言われてみれば気になります。
これについては、九州大学の巌佐庸氏の「老化の進化学」が参考になります。ここでは、野生動物は、出産率が低下するような高齢になると、生存率が急激に下がってくると述べられています。
引用:
久和茂編『獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 実験動物学』朝倉書店 2013年4月p.112
上記によると、ゴールデンハムスターのオスの性成熟は6~8週、メスは28日で、繁殖寿命は1年ですので、例えば3月に生まれたハムスターは翌年4月に、繁殖寿命≒生態的寿命を迎える確率が高くなります。
そして、ここからは推論になるのですが、繁殖寿命を迎えたハムスターは、体力が低下して逃避能力が衰えるため、キツネやフクロウといった夜行性の捕食者を避けて、特に日中での行動時間を長くするのかも知れないと思いました。
「管理者」さんの引用:
変温動物は、かなりビックリです。(中略)温度管理は油断できないですね。
生まれたての子どもは、安定した地下の温度と、母親の体温、高めに維持された湿度に守られながら各自の体温を維持していて、ある程度成長してからは、子ども同士の体温で温め合って母親が不在の時間を乗り切ることができるようです。
「管理者」さんの引用:
メスの方が重いはずの体重が軽いですし、全体的に痩せてるのでしょうか?
私だと、体重が150g以上ないと繁殖させないかな?
先述の『動物実験学』によれば、実験用のゴールデンハムスターの平均は体長が16~18.5cm、体重が80~150gです。1999年に捕獲された野生種は、確かに小さめですね。
少し話が脱線しますが、獣医師の方等の著書や論文には、家畜となった動物は小型化する傾向にあるという内容が散見されます。その原因は何なのか、気になったので調べてみました。
引用:
増井光子「動物園動物の累代飼育についての考察」日本野生動物医学会誌 1巻(1) 1996年
上記によると、飼育下では栄養状態がよくなることや、異性が絶えず身近にいることからくる刺激等によって、性成熟が早まる傾向があり、母体が十分成長する前に性成熟して出産すると、生まれる子も小さくなります。また、島嶼産の動物が大陸産のものに比べて小型化するのと同様に、狭い場所で飼われている動物は小型化するようです。
さらに、動物も食べやすく柔らかい食物を好み、飼育下では時間を掛けて硬い食物を食べることが少なくなって顎が鍛えられないために、顔面骨の短縮や、肉食獣では外矢状稜(頭頂部にあり、顎の筋肉を支えるための骨)の発達が悪くなります。
柔らかい骨は、筋の収縮力に抗しきれず変形し、骨重量の減少によって、キリン等の長脚の種では短足傾向が現れます。運勤量が少なければ、幾らカルシウムを投与しても十分な骨への沈着は望めず、骨密度の低い動物から丈夫な子が産まれることは期待できない、とのことです。
一方、人為的に交配させる個体を選別することによって、家畜を大型化させるケースもありました。
引用:
遠藤秀紀「魅せる命」東京大学総合研究博物館ニュース ウロボロスVolume23 Number3 2019年2月
上記論稿では、経済的、あるいは非経済的な理由によって品種改良が行われ、様々な地域性のある家畜が維持されてきたことや、日本における家畜のあり方やその問題点等が、家畜愛溢れる視点から展開されていました。
野生のハムスターが、豊かな農作物を食べて半家畜化し小型化していったのか、それともペットのハムスターが大きい個体を選抜して繁殖した結果、大型化したのか、どちらなのでしょうね。

長文過ぎて諸々心配です
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
野生の毛色を捨てるのは、家畜化の始まりなんですかね?
引用:
水谷誠・勝家康富·梅沢英彦・倉益茂実「シリアンハムスターに出現した振戦を伴う黒毛色ハムスター (black tremor)の特性およびその遺伝子分析」実験動物 35巻第2号 1986年
この論文では、日本生物化学研究所付属実験動物研究所で維持している系統において、振戦(しんせん、筋肉が意識とは無関係に収縮と弛緩を繰り返して体が震えること)を伴う黒毛色のハムスターが出現したことから、その遺伝子分析と特性を調べた結果を次のように要約しています。
<E および B 遺伝子座の遺伝子型とそれぞれの特徴>
EEBB ゴールデン 黒い目 黒い耳 振戦無
EEbb シナモン 赤い目 白い耳 振戦無
eeBB クリーム 黒い目 黒い耳 振戦無
eebb クリーム 赤い目 白い耳 振戦無
EEBB ブラック 黒い目 黒い耳 振戦有
EEbb ダークシナモン 赤い目 白い耳 振戦有
eeBB クリーム 黒い目 黒い耳 振戦有
eebb クリーム 赤い目 白い耳 振戦有
<分析>
- 黒毛色のハムスターはEおよびBが存在する染色体上の突然変異ではない。
- 黒毛色のハムスターは単一劣性遺伝子“bt”が毛色の黒色化と振戦の形質を発現させたものと考えられる。
- 毛色の黒色化が発現するためには、Eが存在する染色体上に、少なくとも1つのE遺伝子が必要である。このためクリーム色のホモ個体(ee)はクリーム色のままで、振戦のみが発現する。
- 毛色の黒色化の程度はホモ個体(EE)とヘテロ個体(Ee)とで異なり、前者は後者より黒色化が激しい。
- 振戦の原因と思われる中枢神経系のミエリン形成遅延症およびメラニンの生合成過程の研究用モデル動物としての可能性が考察される。
引用:
辻荘一・万年英之「毛色の遺伝子」動物遺伝学ジャーナル 26巻第1号 1998年
引用:
小黒(岡野)美枝子「哺乳動物の毛色に関連するメラノコルチン1型受容体 遺伝子の多様性―イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、キツネ、 トナカイ、ジャガー、ジャガランディ、ポケットマウスー」動物研究 2023年
これらによれば、毛色に関与する100以上の遺伝子の中で、特定のタンパク質を作るための情報を持つメラノコルチン1型受容体(melanocortin-1 receptor、以下MC1R) 遺伝子は、毛色を決める重要な役割をしています。
以前から、アグーチ(野生色)の毛色を決めるMC1R遺伝子に関する実験にはマウスが使われてきて、皮膚の表皮にあるメラニン細胞が茶色/黒のユーメラニン(B/-)を産生するか、それとも赤/黄色のフェオメラニン(b/b)を産生するかを決める原因も分かっています(マウスではbは茶色、Bは黒をもたらします)。
しかし、シリアンハムスター(ゴールデンハムスター)については、マウスで観察される毛色の変異が同じように表れない上、黒色や黄色の毛色パターンが、X染色体にリンクして遺伝子が働くことによって決まっていて、マウスでは見られない現象が起こっています。
つまり、シリアンハムスターでは、性染色体にリンクした黄色の(Sly)遺伝子によって、同じ種が属する集団の個体間でも、遺伝子情報を構成する塩基配列(DNAのアデニン⦅A⦆、チミン⦅T⦆、グアニン⦅G⦆、シトシン⦅C⦆)が変化していて、毛色が異なる毛色多型(もうしょくたけい)が見られます。
実験室でシリアンハムスターの系統系列を作成し、毛色に関する研究を行ったところ、劣性遺伝(優性遺伝に比べて形質が現れにくい遺伝子)の、毛色が黒のハムスターでは、 アグーチ遺伝子におけるp. C115Y変異(タンパク質中の115番目のアミノ酸がシステイン⦅C⦆からチロシン⦅Y⦆に換わっていること)により、ノン-アグーチ(野生色ではない毛色)の遺伝を起こします。また、性染色体にリンクした黄色のシリアンハムスターもSly表現型として示されます。
黒色と黄色の色素が交互に組み合わされた毛色パターンがあり、黒色では、Golden Black (ゴールデンブラック)、 Black(黒色)、Banded white Dark tipped (帯状の白色で先端が濃い色)、黄色ではDark-tipped (先端が濃い色)など毛の色のタイプにより異なります。
米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のゲノム情報、MC1R遺伝子情報を調べると、ゴールデンハムスターのゲノムから、MC1R遺伝子は、タンパク質を作るための情報を持っている領域がひとつで、その配列が予測されています。この遺伝子がどの染色体に位置するかは未だ明らかになっていない、とのことです。
さて、以上のように、野生動物であれ家畜であれ、ノン-アグーチ(野生色ではない毛色)の個体は、一定の割合で出現することが分かりました。それを踏まえて、なぜ野生動物と家畜の毛色は異なるのかについて、次に、先行文献を見ていきたいと思います。
引用:
野澤謙「家畜化の意義と要因」哺乳類科学 第27巻第1・2号 1987年
上記によれば、家畜化した動物の特徴として、毛色多型現象の発現が挙げられます。こうした毛色変異は、主遺伝子によって発現するメンデル形質であって、 この突然変異は野生集団中にも起こっていたのですが、(白や明るい色の個体は目立つために捕食者から狙われやすく、)自然淘汰されることによって、これを低い頻度に抑えていました。
それが家畜化されるようになると、これまで気付かれていなかった遺伝的変異が現れて、(捕食者の犠牲になる恐れがなく)自然淘汰も起こらないため、毛色変異型の頻度を著しく増大させました。そこに人為的な多様化淘汰(珍しい毛色等の系統に興味を示し、敢えて多様化した状態を維持しようとすること)が加わって、毛色多型現象が生まれるものと考えられます。
毛色変異は古い歴史をもつ家畜では広く一般的に見られ、野生型毛色をもつ個体の方が少数である場合が多く、また特定の変異型毛色が家畜品種の特徴とされる例もこれまた多いとのことです。
さらに、先述の増井光子氏の論文によれば、勤物の体色は産地により多少の変異はありつつ、種によって定まっていますが、累代繁殖をするうちに、本来の範囲を超えて褪色傾向を示すものが生じてくるそうです。
これらに対して、藤田医科大学ホームページで、若松一雅氏等が「外界からの捕食から逃れるために野生マウスは短期間で遺伝的変異を起こし体毛色を外界からの保護色になるように変化させることを実証」したことを紹介しています(2019年2月)。
このことは、ゴールデンハムスターにも当てはまるかも知れません。
20年前に見つかった野生のゴールデンハムスターは、元々の生息域が砂漠化したため北上したものとされていますから、見つかった場所の土や岩の色に近く、目立ちにくい毛色の個体が自然淘汰により適応化したものだと仮定すると、逆にペットのハムスターの野生色が、100年前の野生種の毛色に近いのかなとも思えます。
ただ、ナショナル・ジオグラフィックの「冬毛の動物を絶滅させない方法、研究者が提言」という2018年の記事で、米モンタナ大学の野生生物学者スコット・ミルズ氏らの研究チームが、温暖化によって雪が減り、冬毛が目立って絶滅の恐れのある動物の体毛色が適応化することについて論じた内容を紹介していて、そこでは「個体群の規模が大きく、個体群同士の交流があれば、進化は早く起こる」と述べられているのですが、ゴールデンハムスターの群の規模は縮小していると思われ、交流も現状確認できません。
ペットのハムスターのアグーチの毛色が薄くなったのか、それとも野生種の毛色が濃い色に変化したのか。これは100年前の標本とドイツで維持されている野生種の子孫の毛色を比べてみれば分かるかも知れませんが、浅学の私には判断できません。
「管理者」さんの引用:
人が作る農作物を食べることで、寿命は伸びたんでしょうか?
元々粗食な動物なので、繁殖力は上がるけど、寿命は縮んでいる気もしますね。
野生のハムスターの寿命についても、今までに分かった内容から、推察してみたいと思います。
まず、野生のゴールデンハムスターは、農地近くに巣穴を作っていて、遠くまで探しに行かなくても、食べやすい餌が豊富にあります。ステップの砂漠化や農地の拡大、それに長く続く紛争によって生息域も年々狭められています。
この状態は半家畜状態と考えることもでき、栄養を取って性成熟が早まり、行動半径が狭く、運動不足で骨密度の低い小さい個体が増えているかも知れません。
先述の巌佐庸氏の論文でも、寿命は体の大きさによって決まると述べられています。
引用:
大泰司紀之「哺乳動物の寿命に関する一考察」哺乳類科学 16巻第1号 1976年
上記によれば、自然条件下における種族維持は繁殖活動と結びついて行われており、繁殖能力と体力の衰退は同じ頃に始まっています。ヒト以外の哺乳類については、繁殖活動の衰えや体力の下り坂にかかった年齢に達すると、採食に必要な歩行能力や咀嚼能力、捕食者からの逃避能力が衰えて死亡します。
ヤチネズミやハタネズミの場合、春生まれの個体は成長が早く、秋に繁殖活動をして冬までにほとんどが死亡します。しかし秋生まれの個体は次の年の春に成熟して繁殖活動を行い、夏期の間に死亡します。したがって生理的寿命(最適な条件下における平均寿命)と生態的寿命(与えられた条件下における平均寿命)の最高死亡年齢には大きな差が生じます。
野生のゴールデンハムスターが小さいということは、寿命も短くなっている可能性があると思いました。

今回も訂正です
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
増井光子氏の論文の引用中、
運勤量→運動量
勤物の体色は→動物の体色は
テキストのコピーミスを見落としました。
水谷誠氏等の論文の引用中、
日本生物化学研究所→日本生物科学研究所
誤変換です。
寿命の話の部分、
栄養を取って→栄養を摂って
誤変換です。
以前の書き込みより、時々助詞の脱落や不適切な使用もやらかしていますが、きりがないのでそこはご容赦ください。

またまた訂正と補足です
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
前回の書き込みで、根本的な見落としをしていました。
1999年に捕獲されたハムスターの体長は記載がなく、小さいのか単に痩せているだけなのか分かりません。管理者様も冷静に「体重が軽い」とだけ言われていますよね。
また、巣穴内部の湿度については、以前のトピックで少し触れたことがありますが、乾燥地帯に住む、湿度に弱い動物の巣穴の湿度が高いという点に引っかかる方もおられると思いますので、ついでに補足します。
まず、恒温動物が体を動かすと、体内で熱が作られて体温が上昇します。
体温が上がると、体表面から空気中へ熱を逃がすと共に、汗が蒸発する時の気化熱によって、体温を下げます。
ベルクマンの法則によれば、熱生産量は体重に比例し、放熱量は体表面積に比例すると考えられます。
つまり、体が小さくなるにつれて体重あたりの体表面積が大きくなり、熱の放出が大きくなります。
この時、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温を上昇させるためのエネルギー消費を節約することができます。
それでは実際の巣穴の湿度はどれくらいなのか、2000年の論文を確認しましたが、1999年の調査では湿度のデータロガーはなかったのか、記載がありませんでした。
英語圏のいくつかの気象サイトによれば、
アレッポの年間相対湿度は、平均60%で、夏(乾季)は40%、冬(雨季)は80%です(アレッポに次いでゴールデンハムスターが多く発見されている北部の都市アザーズは、シリア内戦の前線に当たるためか、気象データを調べられませんでした)。
ハムスターが地上で活動する時期は乾燥期に当たり、地上の湿度が高い時期は冬眠しています。寒い季節に湿度が高い分には、細菌等も活性化しないと思われ、冬眠中の体温を保つ上で通気性の悪い土壌を選ぶのは、止むを得ないことなのかなと思います。
因みに、日本の年間相対湿度は全国平均でおよそ70%で、東京では冬が54%、夏は81%。大阪では冬が58%、夏は71%です(気象庁、2024年度データ)。
日本では暑い時期に湿度が高くなるため、細菌が繁殖しやすく、現地と同じように巣箱の湿度を高くしてしまうと、病気に罹る危険が高くなると思います。

こちらが汗をかきそうです
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
さらに見落としです。
「山登魚」さんの引用:
体温が上がると、体表面から空気中へ熱を逃がすと共に、汗が蒸発する時の気化熱によって、体温を下げます。(中略)湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温を上昇させるためのエネルギー消費を節約することができます。
発汗による体温調節ができるのは、ヒト等一部の動物だけで、ハムスターは汗をかけないですよね。
全身からの熱放出に加え、毛づくろいによって体温を下げている感じでしょうか。

要約が不得手でまた長文です
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
引用:
「野生由来および実験室のゴールデンハムスターの体重、身体測定値、臓器重量の比較研究」実験動物 2002年11月
この論文があったことを思い出しました。全文翻訳し、改めてきちんと読んでみましたので、以下長めに紹介します。
1930年4月、I.Aharoniによって捕獲された11匹のゴールデンハムスターのうち、残ったオス3匹とメス1匹の兄妹が、世界中のほとんど全てのペットや実験用コロニーの繁殖種となっている。
それ以降、シリアとトルコで捕獲されたゴールデンハムスターはわずか数匹で、これらは全て繁殖に失敗したため、元の遺伝子プール(互いに繁殖可能な個体群が持つ遺伝子の総体)はこれまでほとんど影響を受けていない。1971年にM.R.マーフィーが捕獲した12匹のハムスターから派生した1組の非近交系も、一般的な比較研究には使用されなかった。
そこで、行動や遺伝学の研究のために2回の探検隊が組織され、1999年に、合計19匹のゴールデンハムスターが捕獲された。これらの動物は、アレッポ大学から提供された別の3匹の野生個体と共に、野生由来のハムスターの新しい繁殖種を確立した。
遺伝子検査の結果、実験室系統では対立遺伝子(同一の染色体上の遺伝子で、父親由来と母親由来の遺伝子が異なる特徴を持つもの)の数が減少し(2.5±0.3 VS 7.8±0.6)、ヘテロ接合性(ある遺伝子座で異なる対立遺伝子を持つ状態)も低いことが分かった (0.15±0.05 VS 0.69±0.03)。
今回の比較研究の目的は、我々の実験室の異系交配種の(以降「実験室」と呼ぶ)ゴールデンハムスターと、野生で捕獲された19匹の動物の子孫の(F2 および F3。以降「野生由来」と呼ぶ)ゴールデンハムスターについて、長期にわたる分離によって生じた遺伝子減少が、形態学的特徴に及ぼす影響を評価することである。
動物、飼育環境、実験手順
この研究では、生後4日以内に生まれたゴールデンハムスター104匹を選んだ。そのうち65匹(オス32匹、メス33匹) は実験室ハムスターで、39匹(オス25匹、メス14匹)は野生由来のハムスターであった。30日齢で離乳した後、動物は2つの実験グループ (個別飼育と集団飼育) にランダムに割り当てられた。各グループは、同じ性別の動物3匹で構成された。
実験室ハムスター26匹(オス14匹、メス12匹)と野生由来のハムスター19匹(オス11匹、メス8匹)は、個別に飼育された。実験期間中、両系統のグループは非常に攻撃的な行動をとる可能性があり、そうなればグループを解散し、その後は全ての個体を別々に飼育する必要があった。
全てのハムスターは、空調の効いた窓のない部屋で、金網の天板が付いた標準的なプラスチック製ケージ(55×33×20cm)の中で飼育された。針葉樹ウッドチップの床材(オールスパン)は2週間ごとに交換した。餌のペレット(アルトロミン;粗タンパク質19%、粗脂肪4.2%、粗繊維5.8%、灰分7.2%、水分13.5%、無窒素抽出物50.3%)と水道水は自由に与えた。照明は14時間(5:00~19:00)で、光強度は200~300ルクス(明期)から5ルクス(暗期)まで変化した。室温は21±1℃、相対湿度は60~65%であった。
動物の体重は、デジタル天秤(精度0.1g)を使用し、点灯後2~4時間で週2回測定した。
体重と臓器重量
154±2日齢(22週目)、概日周期の同じ時点(点灯後2~4時間)でハムスターの体重を測定し、ケタミン(麻酔)を投与して、完全に鎮静されてから、定規とノギス(精度0.5mm)を使用して、体長(鼻先から尾先まで)、尾の長さ、後足の長さ、耳の長さを測定した。その後、小動物体組成分析装置を使用し、体への負担が少ない手段で除脂肪量(体重から体脂肪量を引いた筋肉や骨、内蔵等の総重量;FFM)と全身水分量(TBW)、全身電気伝導率 (TOBEC) を測定し、ケージから取り出して15~20分後、血液採取と臓器の重量を測定した。
統計
データは平均値として示され、分散の統計的尺度は標準偏差(SD)である。データセットの統計分析は、多変量分散分析(MANOVA)によって実行された。その後、平均値の差はシェッフェ事後検定(2グループの平均値の差を調べて対比する方法、スタティスタ5.5)によって評価された。有意水準(起こる可能性が低いと判断する基準となる確率)はP<0.05で認められた(全体の5%は、起こる可能性が低い=95%は起こる可能性が高いとした)。
結果
グループ飼育のハムスターに攻撃性が現れると、すぐにグループは解散された。13匹の実験室ハムスターグループと7匹の野生由来のハムスターグループ(38.5%)、5匹の野生由来のハムスターグループ(71.4%)は、重度の傷害を防ぐため、グループ分け後4週目から12週目の間に分離する必要があった。これにより、野生由来のハムスターの方が攻撃性は高く、両系統ともメスの方が攻撃性は高い傾向にあることが分かった。分けられた合計10グループのうち、7グループがメスであった。
外観と身体測定
実験室ハムスターと野生由来のハムスターの全体的な外観には違いはなかった。身体測定では、野生由来ハムスターの方が体長はわずかに大きかった。野生由来のハムスターの耳は、実験室ハムスターの耳よりも平均で0.6mm大きかった。性差は、野生由来のハムスターの後足の長さ(オスは0.9mm大きい)、実験室ハムスターの尾の長さ(メスは1.9mm長い)に見られた。グループ飼育により、体長は両系統で大きくなっていた。
体重と食餌摂取量
出生後13週目から22週目まで、実験室ハムスターは1日あたり7.3±0.3g、野生由来のハムスターは1日あたり6.1±0.3gの食物を消費し、このパラメータ(変数)に性差はなかった(P<0.001)。
グループ飼育ハムスターは、個別に飼育された動物より多くの餌を消費した。その差は、実験室ハムスターでは1日あたり2.8g、野生由来のハムスターでは1日あたり1.9gであった。
実験室ハムスターは、高い食餌摂取量のために、研究の終わりまで体重が増え続けた。両系統のオスはメスよりも重かった。野生のデータでさえ、このオスに偏った差を裏付けている(99.5±5.9g VS 76.0±13.7g)。
体組成
実験室ハムスターは、体重増加に伴って、FFMが22.8g、TBWが17.3g増加していた。相対値についても、野生由来のハムスターよりFFMが2.8%、TBWが2.7%多くなった。
両系統とも、オスはメスよりも相対FFMとTBWが低く、絶対脂肪(16.3gと14.1g)および相対脂肪(9.2%と9.3%)が多かった。
ヒトの場合、女性の相対体脂肪含有量が男性よりも高いことはよく知られているが、ゴールデンハムスターでは正反対であった。マウスやモンゴルのスナネズミの体脂肪含有量にも性差があり、オスの方が肥満度は高いことが明らかになっている。
グループ飼育により、実験室ハムスターと野生由来のハムスターの体脂肪の絶対量(16.7gと12.7g)と相対量(5.1%と7.7%)が増加し、相対的なFFMとTBWもそれぞれ減少していた。
臓器質量
実験室ハムスターの脾臓は絶対的(89mg)及び相対的に(0.05%)重かった。グループ飼育では脾臓の絶対質量が増大した(66gと21g)。
実験室ハムスターの腎臓の絶対質量は重かった(61mg)が、相対的な測定値には差がなかった。野生由来のハムスターには性差が見られ、オスの腎臓の方が重かった(110mgと0.05%)。グループ飼育では、腎臓の絶対重量が重くなった(204mgと155mg)。
実験室ハムスターの副腎の重量は、野生由来のハムスターよりも重かった(4mg、つまり0.02‰)。両系統とも、メスの副腎の重量は軽かった(13mgと7mg、つまり0.1‰と0.05‰)。グループ飼育では、両系統とも副腎の絶対重量(9mgと6mg)と相対重量(0.05‰と0.06‰)が重くなった。
実験室ハムスターの生殖器官も、子宮を除いて重かった。グループ飼育では、実験室オスのみ、相対的な精巣重量が低かった。
ゴールデンハムスターは基本的に単独飼育で、離乳時から単性群で飼育することはできるが、このような条件下では、広範な社会的ストレス症状を伴う序列が確立される。メスのグループの階層構造はそれほど安定していない上、メスはオスよりも攻撃的である。
ストレスが視床下部-下垂体-副腎系と視床下部-下垂体-性腺系の両方を活性化することはよく知られている。驚くべきことに、社会的ストレスに対する感受性は、両系統のゴールデンハムスターとも同じようである。これは、例えばモルモットとは対照的である。モルモットの場合、家畜はストレス系に対する反応性が低下し、社会的耐性が高まっている。
※‰(パーミル)=1000分の1を単位とする濃度単位(0.1%)。

Re: 長文過ぎて諸々心配です
投稿日時:
- 名前
- 管理者
「山登魚」さんの引用:
人間をガン無視していたシマリス小屋の前は人がまばらでしたが、餌をもらえることを期待して駆け寄ってくるヤギや羊のエリアは家族連れで賑やかでした。
下心のない動物の行動こそ、本来の姿ですからね。
子供と一緒に遊んで、わざと負けて喜ばせるより、ぎりぎり勝って舌打ちされる方が本性が見えるので加減もしやすいです。
「山登魚」さんの引用:
もう少し暖かくなったら、植木鉢の土(好気性の微生物)に、時間を掛けて分解してもらおうかなと思っています。
室内だとタンポポやヒマワリは難しいと思いますが、ヘビイチゴならできそうなので、散歩中の自然採取を試してみたいです。
水槽や植木鉢に、浮かせた状態で網を張って二層式にすると、ハムスターが土で汚れず、植物を採取できるのかなぁ〜とか、ぼんやり考えてますが、部屋に置き場所がなくて実践したことがないです。
「山登魚」さんの引用:
私は子どもの頃、ツツジやサルビアの花を摘んで、蜜を吸うのが好きでした。
小学校の帰り道に咲いていたので、ついでにミツバチや蝶を捕まえたりもしてましたね。
「山登魚」さんの引用:
日中と夜間の激しい寒暖差を緩和するために外気を遮断することは重要ですね。
寒くなってくると、寝る前にウッドチップを運んで、巣箱の入り口を埋めようとする行動を見ますね。
部分的にウッドチップが減ってきたと思ったら、ヒーターの設置や、温度設定変更の合図にもなります。
「山登魚」さんの引用:
野生の狩りの姿からは程遠いですが、うちのジャンガリアンは、この頃毎回オヤツをもらおうとして入口から身を乗り出し過ぎ、落ちそうになっています。
ジャンガリアンハムスターの場合は、思いついたら行動してしまう性格の個体が多いので、ケージや飼い主の指も齧ったりしやすいですしね。
野生動物が、観光客の食べ物を盗ったりもらったりするのも、ジャンガリアンタイプの性格なんだろうなぁ〜と思いますね。
「山登魚」さんの引用:
1999年以前に発見されたゴールデンハムスターも、その内訳を見ると大体がメスでした。
ゴールデンハムスターは飼育下でも、メスの方が行動的で攻撃的ですね。
「山登魚」さんの引用:
では次に、なぜオスは日中あまり活動しないのか、なぜ同じメスでも日中の活動量に差があるのか。こちらについても言われてみれば気になります。
子育てを手伝わない動物なので、メスや子供の餌の採取が必要ないからではないでしょうかね?
ペットとして飼う分には、オスの方がおとなしくて楽といえば楽ですけど。
今、ロボロフスキーハムスターのオス2匹を、同じケージで飼ってますが、オヤツの取り合いになることはありますが、メスと比較するとびっくりするくらいケンカにならないです。ちなみに、ロボロフスキーは子育てを手伝います。
「山登魚」さんの引用:
ここからは推論になるのですが、繁殖寿命を迎えたハムスターは、体力が低下して逃避能力が衰えるため、キツネやフクロウといった夜行性の捕食者を避けて、特に日中での行動時間を長くするのかも知れないと思いました。
他には、繁殖期の強い個体と鉢合わせしないようにとかね。
ペットの個体でも、日中起きてくるのは若い個体が多いので、違うような気はしますが。
「山登魚」さんの引用:
キリン等の長脚の種では短足傾向が現れます。
ちょっと笑いました。
「山登魚」さんの引用:
野生のハムスターが、豊かな農作物を食べて半家畜化し小型化していったのか、それともペットのハムスターが大きい個体を選抜して繁殖した結果、大型化したのか、どちらなのでしょうね。
野生種が大きく、家畜化した実験動物やペットが小さいのでは?
「山登魚」さんの引用:
管理者様も冷静に「体重が軽い」とだけ言われていますよね。
感覚的に、ハムスターの体長は分かりづらいですからね。
「山登魚」さんの引用:
実験室ハムスターは、高い食餌摂取量のために、研究の終わりまで体重が増え続けた。両系統のオスはメスよりも重かった。
密集している環境では、オスの方が太りやすいと。
食べる量まで多いのなら、オス同士が争うために、体を大きくしているんでしょうかね?
データだけでは、私の経験と知識では矛盾してます。
「山登魚」さんの引用:
広範な社会的ストレス症状を伴う序列が確立される。
ペットとは大きく違う点ですね。

Re: 長文過ぎて諸々心配です
投稿日時:
- 名前
- 山登魚
「管理者」さんの引用:
子供と一緒に遊んで、わざと負けて喜ばせるより、ぎりぎり勝って舌打ちされる方が本性が見えるので加減もしやすいです。
管理者様が本来の姿を観察される対象は幅広いですね。
「管理者」さんの引用:
室内だとタンポポやヒマワリは難しいと思いますが、ヘビイチゴならできそうなので、散歩中の自然採取を試してみたいです。
子どもの頃、ヘビイチゴは毒だから食べてはいけないと教わりましたが、
タンポポ・はこべなどの野草の効能と農薬を読んで自分でも調べてみると、やはり毒はなく、無味で少し青臭いようです。
甘くなくて青臭いなら、ハムスターに良さそうですね。私も今度見つけたら摘んで帰りたいと思います。
「管理者」さんの引用:
水槽や植木鉢に、浮かせた状態で網を張って二層式にすると、ハムスターが土で汚れず、植物を採取できるのかなぁ
なるほど、野菜や野草を株ごとハムスターにあげるというアイデアは思いつきませんでした。
根元に鉢底網を被せれば、齧られて誤飲の恐れがあり、金網を被せれば不正咬合になる恐れがあるので、ここは水耕栽培かなと思いました。以前何度か、豆苗や大根の葉の付け根部分で水耕栽培をしたことがあります。野菜の場合、根元の部分が傷みやすいので、あまり長く置かないほうがいいですね。
先日、別の鉢のこぼれ種からタンポポの新芽が出たので、専用の鉢に移植しました。クローバーもぐんぐん伸びてきています。野草は摘んでもすぐに萎れてしまうので、早速室内栽培を試してみます。ある程度根と新芽が出たら、浅めの皿に移して少しだけ水を入れるか、水なしで入れるかして、様子を見てみたいと思います。
「管理者」さんの引用:
小学校の帰り道に咲いていたので、ついでにミツバチや蝶を捕まえたりもしてましたね。
素手で捕まえたのですか?
ミツバチやアゲハ、モンシロチョウ、タテハチョウはほとんど羽を休めずに飛んでいて、私には捕るのは難しい相手でした。シジミやテントウムシ、セミ、カナブンなら、見つけると摘まんでいました。
「管理者」さんの引用:
寒くなってくると、寝る前にウッドチップを運んで、巣箱の入り口を埋めようとする行動を見ますね。
部分的にウッドチップが減ってきたと思ったら、ヒーターの設置や、温度設定変更の合図にもなります。
言われてみれば、うちでも寒くなる頃、巣箱の出口周辺が巣箱の天井の高さまでウッドチップで山盛りになっていたのに、何回目かの大掃除の後はウッドチップを積み上げなくなり、近頃は日中暖かくなったからか、細切れになった巣材用の新聞紙が出口から押し出されていました。
「管理者」さんの引用:
ジャンガリアンハムスターの場合は、思いついたら行動してしまう性格の個体が多いので、ケージや飼い主の指も齧ったりしやすいですしね。
相変わらずうちのジャンガリアンには巣箱の壁を齧られています。巣箱の大きさには限界があるので、彼の創作意欲を満たせるように、もう少しウッドチップの厚みを増やしてみようかなと思っています。
「管理者」さんの引用:
野生動物が、観光客の食べ物を盗ったりもらったりするのも、ジャンガリアンタイプの性格なんだろうなぁ〜と思いますね。
外で食事を摂っていると、場所によってはドバト(カワラバト)や猫が集まってきます。ドバトは何もあげないと早々に離れていきます。先日の公園のヤギや羊、奈良公園の鹿と同様に、ジャンガリアンタイプなのかなと思います。
食べ物をもらい慣れた猫には、1〜2mくらい離れた所で、かなり根気強く待たれます。去年はキャンプ場にいた野良猫に、食べ物が入っていた空き袋(洗浄済)を一瞬で持ち去られ、後で樹林帯を探しに行くと、ビリビリに破かれていました。匂いがしたのに何もなくて、がっかりしたんだろうなと思います。
「管理者」さんの引用:
ゴールデンハムスターは飼育下でも、メスの方が行動的で攻撃的ですね。
「管理者」さんの引用:
メスと比較するとびっくりするくらいケンカにならないです。
「管理者」さんの引用:
ペットとして飼う分には、オスの方がおとなしくて楽といえば楽ですけど。
一般的には、動物はオスのほうが穏やかで、メスのほうが活発で気性が荒いようですね。
うちでは統計を取れるほど動物を飼ってはいないのですが、その例外のようなケースが多かったです。
私は小学校の頃飼育委員をしていて、学校で(かなり劣悪な環境で)飼われていたウサギが深刻な怪我をしたり病気に罹ったりすると、許可を得て引き取り、通院させながら家で世話をしていたのですが、大体オスのほうが活発で、薬を飲んだり散歩から帰るのを嫌がったりして自己主張が強く、メスのほうが環境の変化にもどっしりと構えていておとなしかったです。
また、うちで飼っていたシマリスもオスのほうが気性が強くてタイガー期も激しく、メスのほうが穏やかでよく懐き、隠していた餌を片付けてもそれほど怒りませんでした。
ハムスターについては、先代のジャンガリアンは1匹だけ残っていたオス、今のジャンガリアンは4匹入荷された中の1匹でしたが、4匹ともオスでした。
日頃の健康観察で、子宮系の病気を早期発見できる自信がなかったので、初心者のうちはオスで良かったと思っていますが、いつかメスも飼って、違いを見てみたいです。
「管理者」さんの引用:
子育てを手伝わない動物なので、メスや子供の餌の採取が必要ないからではないでしょうかね?
「管理者」さんの引用:
他には、繁殖期の強い個体と鉢合わせしないようにとかね。
ペットの個体でも、日中起きてくるのは若い個体が多いので、違うような気はしますが。
野生のオスが、日中あまり地上に出てこないのは、子育て中のメスほど餌を必要としないからで、メスの中にも日中出てこない個体がいるのは、同様に、基礎代謝が落ちてそれほど餌を必要としない高齢個体だから、と理解するのが自然でしょうか。
また、地上の危険性については、いくつかの書籍や論文を読んでいても、繁殖期のハムスターが特に攻撃的であることが分かり、天敵同様、最大限の警戒が必要なのだと思います。
若い個体のほうが日中起きてくるというご指摘は、言われてみれば思い当たります。うちでも先代のジャンガリアンは3歳を過ぎた頃からほとんど巣箱から出て来なくなり、たまにお世話やオヤツの時間に出てきても、散歩をしようとしませんでした。
そもそも、2002年の論文の本文の調査報告からもグラフからも(6:00と18:00にピークがあり、正午当たりの活動がほとんど見られないM字カーブ)、昼行性というより薄明薄暮性(crepuscular)のような印象があるのですが、論文には昼行性(diurnal)と書かれています。
この辺りも、個人的に理解の及ばない部分です。
「管理者」さんの引用:
野生種が大きく、家畜化した実験動物やペットが小さいのでは?
おっしゃる通り、2002年の論文で、計測の結果、野生由来のハムスターのほうが、わずかに体長が大きいことが明らかにされていました。
「管理者」さんの引用:
密集している環境では、オスの方が太りやすいと。
食べる量まで多いのなら、オス同士が争うために、体を大きくしているんでしょうかね?
データだけでは、私の経験と知識では矛盾してます。
「管理者」さんの引用:
ペットとは大きく違う点ですね。
私は、集団飼育ではストレスが掛かるので、過食気味になって太るのかな、くらいに考えていました。
引用:
R.ガッターマン「モンゴリアンスナネズミとゴールデンハムスターにおける全身電気伝導率(TOBEC) 測定」実験動物科学ジャーナル 2002年1月
引用:
K.ミリツァー(K.Militzer)「シリアゴールデンハムスターの皮膚及び臓器特性の発生:Ⅰ.皮膚区画及び皮下組脂肪細胞」実験病理学 1990年 40巻第2号 p,77~93
2002年の論文では、上記論文の内容に触れ、前者ではスナネズミもオスのほうが体重が重いとか、後者ではアクロメラニック(皮膚のユーメラニンとフェオメラニンの両方が減少して、末梢部分など限られた部位にのみメラニンが発達する)近交系とアグーチ色(野生色)の近交系で体重と臓器の重量を比較すると、どちらの系統もオスはメスよりも重かったという結論に至っていることも述べています。
しかし、2002年の論文では同時に、ディテルラン(Dieterlen,1959)、アルトマン,カッツ(Altman,Katz,1979)、オオタキ(Othaki,1979)、バート,コンラッド(Birt,Conrad,1981)、ホーゲル他(Höger,1983)による、メスのハムスターの方が体重は大きいとする論文も挙げています(いずれも原文は見つけられませんでした)。
ガッターマン氏は、報告されたこれらの差は必ずしも統計的に証明できる訳ではなく、これらのデータは全て、飼育環境が様々であるため、互いに比較することはできない(例えば、単独飼育か集団飼育か、自然光周期か人工照明か、餌が異なるか等)として、この種の性的二形性(性差)を一般化することはできないと論じています。
体の大きさや体脂肪率に性差があるとすれば、その理由は何かについて、対象を齧歯類に広げて調べてみると、以下の論文がありました。
引用:
高田靖司「アカネズミ、ハツカネズミおよびカヤネズミの体脂肪量の変異」哺乳類科学 32巻第2号 1993年 p,107~115
高田氏の調査は、表題の冬眠しない種類のネズミが対象で、これらの種類に顕著な性差は認められなかったのですが、この論文によれば、冬眠する動物にとって、体脂肪の蓄積はエネルギーの蓄積としての役割が大きく、野外で捕獲されて実験室で自由に摂食、飼育されたネズミは、野外の同胞よりも極端に多量の脂肪を蓄えるとのことです。そしてこの実験室のネズミの高脂肪には、運動量の低下が部分的に関係していると思われる、と考察されています。
さらに、繁殖はエネルギー摂取を高め、特にメスの摂食・同化量は妊娠中に次第に増大し、授乳時にピークとなって、蓄積脂肪の相当な動員が起こるとしています。
これをハムスターにあてはめると、実験室ハムスターでも野生由来のハムスターでも、集団飼育下で大きくなるのは沢山食べても運動不足だから、ということになります。
また、メスのほうが繁殖のためのエネルギーを多く必要とし、活動量が多くなる結果、体脂肪の貯えが少なくなる、と考えればいいのかなと思いました。